ドイツ同時代演劇リーディングシリーズとして上演された本作品はリーディングと言いつつも限りなく普通の演劇公演に近い上演スタイルとなっている。これはイロリムラのプチホールという狭い空間を生かして、このスペースだから可能な本格演劇公演だ。シンプルなのにとてもよく考えられた舞台美術が素敵だ。マンションの1階から11階までを象徴した木枠の中を役者たちは上から下へ、下から上へと移動する。もちろん横移動もするのだ。足の大きさくらいしかないスペースを慎重に移動しながら、芝居をする。一応リーディングなのでテキスト片手に、だが、あのテキストを外すと、これはそのまま通常の芝居となる。数字の1から11までが示され、その数字が置かれた部分はエレベーター部分に模される。モニターで、部屋の入口が示され、部屋の中は長椅子ひとつで示される。簡単な装置がとても効果的で、この空間が立体的に提示される。見事だ。
お話は現実の次元から、徐々にいつのまにか幻想の領域へと移行する。気づくとアラビアの夜がそこにはある。僕たちは登場人物である5人の男女とともに、この現実とも幻想とも言い切れない不思議な世界の中で心遊ばせる。
11階建てのマンションが舞台だ。それと、そのとなりの同じマンションの別棟も少し。9階から11階までが断水する。管理人は原因究明のため地階からエレベーターで上がっていくのだが、そのエレベーターもなんだか調子が悪いようだ。なんだかへんてこな夜の始まりである。
8階の女はたくさんの荷物(紙袋が3つ!)を抱えて、今、部屋のドアを開けようとしている。ルームメイトは部屋の中に居るはずなのだが、きっといつものようにソファで居眠りしているのだろう。もうすぐ恋人がやってくる。早く部屋に入って、準備したい。断水のために8階までやってきた管理人は彼女を助けるべきか、躊躇している。向かいの棟に住む男は、さっきまで居眠りしていた自分と同じ8階の女が、シャワーを浴びているのを覗き見してしまう。
ルームメイトの2人の女。そこにやってくる3人の男。11階建てのマンションの迷宮で右往左往する5人の男女のお話。いつもの本公演と同じようにとてもスタイリッシュで視覚的にも楽しめる。現実のマンションでのほんのちょっと不思議な出来事がいつのまにか、イスラムの空閨と溶けあい、現実は幻想と融合する。コミカルな劇なのだが、殊更笑わせることが目的ではなく、夏の夜のファンタジーとして楽しめる。
お話は現実の次元から、徐々にいつのまにか幻想の領域へと移行する。気づくとアラビアの夜がそこにはある。僕たちは登場人物である5人の男女とともに、この現実とも幻想とも言い切れない不思議な世界の中で心遊ばせる。
11階建てのマンションが舞台だ。それと、そのとなりの同じマンションの別棟も少し。9階から11階までが断水する。管理人は原因究明のため地階からエレベーターで上がっていくのだが、そのエレベーターもなんだか調子が悪いようだ。なんだかへんてこな夜の始まりである。
8階の女はたくさんの荷物(紙袋が3つ!)を抱えて、今、部屋のドアを開けようとしている。ルームメイトは部屋の中に居るはずなのだが、きっといつものようにソファで居眠りしているのだろう。もうすぐ恋人がやってくる。早く部屋に入って、準備したい。断水のために8階までやってきた管理人は彼女を助けるべきか、躊躇している。向かいの棟に住む男は、さっきまで居眠りしていた自分と同じ8階の女が、シャワーを浴びているのを覗き見してしまう。
ルームメイトの2人の女。そこにやってくる3人の男。11階建てのマンションの迷宮で右往左往する5人の男女のお話。いつもの本公演と同じようにとてもスタイリッシュで視覚的にも楽しめる。現実のマンションでのほんのちょっと不思議な出来事がいつのまにか、イスラムの空閨と溶けあい、現実は幻想と融合する。コミカルな劇なのだが、殊更笑わせることが目的ではなく、夏の夜のファンタジーとして楽しめる。