「かみかい」と読むらしい。知らなかった。チケット買う時、「しんかい」と言うと理解してもらえなくて、「カミマワシ」と言っても無理で困った。監督・脚本はこれが長編初となる中村貴一朗。
ほぼふたり芝居。しかも5分を永遠に繰り返す。一体何回繰り返すのか、最初数えていたが不可能。それくらいに5分が続く。単純に20回で100分。だけどこの映画は上映時間が88分と短い。だから、5分は途中から巻いて描かれる。それにしてもたぶん50回くらいは繰り返されたのではないか。
だんだん途中から息切れしてくる。当たり前だ。いくらなんでも同じ時間が50回くらい続くと現実なら参るだろう。だけど、実際ならたった250分。4時間くらいでしかない。でも主人公の男の子が途中からふらふらになるのは当選だろう。
彼は無限ループに迷い込む。ここから抜け出すことを考えて何度でも5分をトライする。だけどさすがに息切れする。挙句は彼女に対して有らぬ行為をしてしまう。5分後にはまた巻き戻されるなら何をしてもいいから、と。(そんなわけないのに)
一体どこに行き着くのか? 想像もつかないまま話は無限ループ。だけど、映画は88分で終わる。しかも繰り返すうちに時間は過ぎていくことがわかった時、自分たちは5分ずつ歳を取る。まさかの展開から、あっと驚くエンディングに突入。
終盤のしつこさには少し辟易するけど、それを88分の映画の中でやり切るのは立派。歳を取ったふたりがまだ無限ループの中にいる、という展開だけでも「なかなかやるな」と思ったが、さらに追い討ちをかけるのは、すべてが彼の妄想だったというオチだろう。普通なら妄想オチは邪道だが、この場合はまさかの大逆転になる。
彼は17歳の夏をずっと夢に見ていたことになる。夏休みの学校。大好きな彼女とほぼふたりきりの時間。待ち合わせの30分前、教室で居眠りして待つ。約束の午後1時。
人生の最後。病院のベッドで眠り続ける。彼女が見舞いに訪れてきたことも彼はわからない。あれが映画のラストだったらそれは美しい。
だが、まだまだ続く。老齢のふたりが真っ暗の夜の教室でまだあの5分を繰り返すシーンはいささかやりすぎ、かも。いくらなんでもあそこまでしなくていい。夏の日に彼女から出来たばかりの扇子を貰うシーンで終わってもよかった気がする。
たった88分にうんざりするほどの永遠を封じ込めた。まさかの力作。