本谷さんの小説なら、以前からかなり読んでいるのに、肝心の戯曲の方は、なんと今回が初めてだ。これは岸田戯曲賞受賞後第1作である。思った以上に読みやすくて、おもしろかった。一瞬で読み終えることができた。基本的に戯曲はもどかしいから、僕は読むのが嫌いなのだが、彼女の戯曲は勢いだけで読めてしまう。それって舞台で見たら、きっともっと凄いのかもしれない。一度見てみたい。
設定の異常さは、いつものことだ。ただ、小説以上に戯曲ではデフォルメが効果的だ。この共同体の、この家族の中に入った女が、結婚後1ヶ月で夫が失踪し、その後、この家を守ることを義務づけられることとなる。彼女があり得ないような過酷な状況を持ち前の元気とやる気で乗り越えていこうとする姿はやはり感動的、というよりも、もはや変態的で、それがなぜか、説得力のある文体で綴られていく。
このありえないような境遇に自分を故意に追いつめていくマゾ的行為は、彼女なりの論理に貫かれていて、彼女に心を寄せる近所の高校生の女の子は残念ながらもうつき合いきれないと思う。とてもじゃない。このいびつな愛憎物語は、ほんの少しつかこうへいにも似ている。ただ、彼女の気持ちが感情面では理解できても理屈としては理解しきれないのが、つらい。
この作品に続いて前作であり岸田戯曲賞の受賞作である『幸せ最高ありがとうマジで!』も読んでみた。こちらも確かにおもしろいのだが、作品としてのレベルはかなり落ちる。これでは世界観の提示が出来てないからだ。
設定の異常さは、いつものことだ。ただ、小説以上に戯曲ではデフォルメが効果的だ。この共同体の、この家族の中に入った女が、結婚後1ヶ月で夫が失踪し、その後、この家を守ることを義務づけられることとなる。彼女があり得ないような過酷な状況を持ち前の元気とやる気で乗り越えていこうとする姿はやはり感動的、というよりも、もはや変態的で、それがなぜか、説得力のある文体で綴られていく。
このありえないような境遇に自分を故意に追いつめていくマゾ的行為は、彼女なりの論理に貫かれていて、彼女に心を寄せる近所の高校生の女の子は残念ながらもうつき合いきれないと思う。とてもじゃない。このいびつな愛憎物語は、ほんの少しつかこうへいにも似ている。ただ、彼女の気持ちが感情面では理解できても理屈としては理解しきれないのが、つらい。
この作品に続いて前作であり岸田戯曲賞の受賞作である『幸せ最高ありがとうマジで!』も読んでみた。こちらも確かにおもしろいのだが、作品としてのレベルはかなり落ちる。これでは世界観の提示が出来てないからだ。