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映画・演劇のレビュー

大阪新撰組『餌食としての都市』

2007-03-22 22:36:04 | 演劇
 新撰組はシアターアーツと銘打って、劇団のスキルアップのために、毎年3月から5月くらいまでアトリエで3~4本くらいを連続で実験公演を行う。普段ならやらない(やれない?)ような企画に次々チャレンジしていく姿勢は素敵だ。

 そして、一昨年の唐十郎(『少女都市』)、昨年の寺山修司(『奴婢訓』)と、大御所の大作をスタジオガリバーの小空間の中に作り上げ、とても刺激的な作品に仕立てたが、今年はドイツの現代演劇に挑戦する。

 スプレーで落書きした壁を背景にして、4人の男女がモノローグとも、ましてダイアローグとも言えないような台詞を叫んでいる。家電製品やソファーなどが、乱雑の棄てられた場所に囲いを作りその中に彼らはいる。ここは彼らの家であり、心の在り処だ。彼らはそこから最後まで出ることはない。叫び、罵り、恨み辛みを吐き出す。「くそっ」とか言いながら、4人は、なんだか論説調の台詞を言い続ける。

 観念的で、現代社会を告発するような台詞や、その内容にはあまり深い意味はない、と思う。いや、本当はあるのだろうが、難しすぎてよくわからない。だいたい役者も、喋りながらよくはわかってないのではないか。みんなよく台詞をとちってる。でも、しかたないと思う。この台詞はきつい。

 この都市は腐りきっている。こんなところで暮らす自分たちは、呪われている。ポルノとインターネットがこの世界を破壊していくようだ。なんだかいろんなことを言ってたが、だからどうした、というのだろうか。設定は面白いが、芝居として伝わってくるものがない。劇中に何度も触れられるポール・トーマス・アンダーソン『ブギーナイツ』のようなインパクトすらない。試みとしては悪くないが、しんどい作品だ。

 それよりこの日は観客が6人でかなり緊張した。狭い空間でこの人数で役者4人と向き合うのは、ちょっとびびる。しかも、仕事疲れで少し眠くなり、困った。古川さんの真ん前に座ってしまってもしかして、居眠りしたのが、ばれていたらいやだなぁ、と思った。だいたい居眠りしたくせにこの芝居がわかったのか、と突っ込まれたら返す言葉もないです。ごめんなさい。ぜひ、しっかりこの芝居を見て正しい評価をしてください。本当はかなり、凄いかもしれない。

 

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