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映画・演劇のレビュー

『ヘルドッグス』

2022-09-22 11:58:29 | 映画

原田眞人監督の新作は久々のバイオレンスアクション。東映映画によくあるやくざ映画とは一線も二線も(そんな言い方あるのか?)画する作品だ。こんなにもスタイリッシュなヤクザ映画を見たことがない。まぁ原田監督はそのキャリアの初期にもこのタイプのアクション映画は作っていた。郷ひろみ主演の『さらば愛しき人よ』だ。87年作品なのでもう35年も前になるのか。感慨深い。当時はあんなかっこいいアクション映画が日本でも作られるのかと感心した。その後彼は代表作『タフ』4部作、『KAMIKAZE TAXI』と続くオリジナルビデオというパッケージングで劇場用映画を軽く凌ぐスケールの大作を連打した。あの頃が彼のキャリアの第1のピークだったのだろう。そして今回、再びあの時代の映画を想起させる凄まじい映画を作り上げた。

「こんなにもスタイリッシュなヤクザ映画」と先に書いたが、でもそれはおしゃれで軽いタッチとかいうのではない。それどころかこれは重厚だ。アクションは切れがよくリアル。でも、安っぽい見せ方ではない。そのアクションシーンはあまりに華麗で、早いので、何があったのか見えないほど。岡田准一は『ザ・ファブル』2部作で見せてくれた派手で壮大な究極アクションの対局をゆくような、一見すると地味そうに見えるけどとてもリアルですさまじい切れ味のシャープな究極アクションを見せてくれる。相棒の坂口健太郎も凄い。彼が吠えまくる凶犬を演じ、静かな狂犬の岡田と対になる。このふたりが巨大なヤクザ組織の中にはまり込み、自由自在に暴れていく。

ストーリーはわかりにくい。せりふも聞き取りにくい。でも、そんなことまるで気にもしないで(気にもならないで)どんどん映画は突き進んでいく。それは傲慢ではなくそこが心地よい。細部までものすごく贅を凝らしていて、一瞬も目が離せない。でも、その細部まで見ている余裕はない。主人公のふたりから目が離せないからだ。それだけではない。彼らの周囲のおぞましいヤクザたちの姿からも目が離せない。キャスティングが素晴らしい。知らない役者たちが多数登場するのだが、その一人一人が適材適所で、少ない登場シーンでもメインキャストに引けを取らない。美術の見事さ、描かれるシーンの背景となる空間にも驚かされる。こんな贅沢な空間でこんなすさまじくめちゃくちゃなアクションがスタイリッシュに描かれていくのだ。残酷なアクションなのに、それはあまりに美しすぎるからため息が出るほどだ。

2時間20分に及ぶ長尺なのに、一瞬もダレさせない。こんな単純な話なのに人間関係が複雑で、その結果まるでどんな話なのかわからなくなるのに、ひきずられていく。エピローグまで、一気だ。久々にアクション映画を見てこんなにも興奮した。


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