今回もまた葬儀屋の話だ。友人が自殺する。彼女が葬儀を担当する。遺書にあったから。古い田舎にはまだまだ女性差別が当たり前のようにある。女というだけで不当な扱いを受ける。主人公の佐久間は葬儀屋で働くことに誇りを持っている。だけど恋人はそれを受け入れてくれない。体裁が悪いからやめて欲しいという。死体と関わる仕事だから。
彼女の話から始まり1話完結で5つの話が綴られる。その都度主人公は変わるが、いづれも葬儀の話で、佐久間の働く葬儀屋が舞台になる連作長編。死と向き合い、さまざまな問題が提示される。差別、偏見、虐め、虐待。暗い話ばかりなのはいつもの町田そのこだ。これでもか、とばかりにキツい話のオンパレード。だけど、ページを繰る手は止まらない。この話がどこに辿り着くのか、気が気じゃないからだ。
最後は再び佐久間の話に戻ってくる。彼女と恋人との話だ。それは4話からさりげなく暗示されるが、ラストで彼女ははっきり結婚問題と向き合う。彼が彼女の仕事を忌み嫌うのは死と関わることは体裁が悪いというような単純な問題ではない。死が彼のトラウマになっていることを知り、その上で自分にとって何が大事なのかという究極の問題と向き合う佐久間の選択は痛ましい。仕事と恋愛についての選択。生きる意味を問う。そして彼女は結婚ではなく、仕事を選ぶ。彼の心を変えれない以上一緒にはなれない。哀しい話だが大事なことだ。情に流されて自分を失うわけにはいかない。まさかこんな展開が待つとは思わなかった。シビアな現実を冷静に突きつけてくる。それは間に挟まれた3人のエピソードも同じである。
死と向き合い、誠実に生きる。人はいつか必ず死ぬ。その時をどう受け止め生きるのかを見つめる。これは町田そのこの渾身の一作である。