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映画・演劇のレビュー

『ステキな金縛り』

2011-10-23 19:39:29 | 映画
 これはあまりと言えばあまりな設定だ。「前代未聞の幽霊裁判」という基本設定自体がバカバカしすぎてダメだ。そこではなんでもあり、になっている。これでは裁判にはならない。こういう設定を用意したところで、もう失敗している。一応ルールはちゃんと作ってあり、そのルールに則って裁判は行われるけど、まぁ、それでもなんでもあり、と同じだ。笑って許せるなら、OKだが、まともにつき合おうとすると、腹が立ってくる。そんな映画である。三谷幸喜がふざけているのをバラエティー感覚で笑い流せるなら大丈夫だ。まともな映画だなんて思わないほうがいい。

 このゆるゆるの映画を、そのつもりで楽しむ観客にとっては、これはとても気持ちにいいエンタテインメントとなるのだろう。現に試写会場では終わったとき拍手が起きていた。(これにはさすがに驚いた!)豪華キャストがそれぞれ見せ場をもらってこのおふざけにつき合い楽しんでいる。彼らはもちろんプロだから誰もふざけることなく真剣にこの「おふざけ映画」を盛り上げてくれる。

 普通ならここまでふざけた内容では1本の映画を作れないだろう。誰かが「あほらしい」とそっぽを向いたなら、それだけですべてがおじゃんになる。もの凄く微妙なバランスのもと、ギリギリのところで組み立てられてある。さすが三谷幸喜である。そこで、僕も素直に笑ってこの映画を楽しむことにした。

 何も考えず「そんなバカな」と笑えたなら、これはとても楽しい。西田敏行なんて途中からやりたい放題で腹芸を披露する。ワルのりの一歩手前で寸止めするのはさすがだ。深津絵里もとてもかわいいし、あんな弁護士がいたなら、法廷も楽しいだろうなぁと思う。物わかりのいい上司(タップダンスがとてもおちゃめな阿部寛だ!)と、とても優しい恋人。すてきなお父さん(死んでるけど)。そして何よりもベストパートナーである六兵衛さんの存在(もちろん落ち武者で幽霊の西田敏行である)。幽霊なのにとってもキュートであんな幽霊なら友だちになりたい。あの世とこの世がこんなふうにつながっていたなら幸せだろうなぁ、と思う。2時間22分は少し長いけど、みんなが楽しめる娯楽の王道を往く。さすが天下の三谷幸喜だ。


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