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映画・演劇のレビュー

『パリ20区 僕たちのクラス』

2010-07-02 22:04:53 | 映画
 パリ20区の中学校を舞台にした1年間のスケッチだ。とてもいい映画だとは、思う。26人のクラスメートたちが生き生きと描かれているし、担任の先生と彼らとの間に生じる溝が少しずつ大きくなっていく過程がリアルに伝わってくる。職員室での教師間のやりとりもとてもさりげなく説得力がある。まるでドキュメンタリーであるかのように見える、という作者のねらいも確かに達成されている。しかし、なんだか、物足りない。

 成績会議の席に生徒代表が参加する、というのには驚かされた。そこで、教師たちが1人1人の生徒について、赤裸々に語るのである。彼らの話にも驚くが、それ以上にそんな話を生徒の居る前で聞かせるということにショックを受けた。生徒は子供だから先生たちの真意なんかおかまいなしに、自分たちの都合のよいように解釈し、それをクラスメートに話す。教室に戻って他の生徒に吹聴する。「××先生があんたのことをこんなふうに話てたよ」って感じである。

 さまざまな子供たちがひとつのクラスにいる。アフリカからの移民だけではなく、中国からやってきた子供もいる。ここは人種のるつぼでる。彼らがそれぞれ自分の国を持つと共にフランス人として、ここにいる。経済的に困窮している家庭も多い。退学になるスレイマンの母親はフランス語が話せない。学校に呼び出されたそんな彼女に、息子である彼は自分が退学にさせられることを通訳して話す。彼はこの学校を退学させられると、母国に強制送還させられることになるかもしれない。そんなシビアな現実を背景にして、彼らが生きる教室の姿がドキュメントされていく。

 確かにとてもいい映画だけど、この現実を通して作者が何を描こうとするかが、見えてこない。映画に描かれた現実の先が、見えてこないのだ。ただ事実を突きつけられても、それだけでは映画としては納得がいかない。

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