習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

クロムモリブデン『恋する剥製』

2010-06-08 23:02:25 | 演劇
 この芝居には全く意味がない。さすが青木さんだ。やるときは徹底的に、である。本当に気持ちがいいくらいに、全くもって何の意味もない。何かをここから考えようとすることすら拒否するくらいの潔さだ。だいたい恋である。そんなものにご大層な意味はいらない。電撃的にドキューンと恋してもらいたい。好きになったらなんでもありだ。頑張れ!

 ところで、これってそんな話だったっけ。最初は占いの話だった、はずだ。いいかげん占い。そこからカルト教団のお話になる? でもこいつらのしていることはただのいんちき占いの延長で、宗教にすらなってない。そこに女子高生がやってきて、彼女を教祖にして、マンションの一室でドタバタしてるだけ。そのお隣さんは、結婚請負相談所。警官に恋した女をサポートする。でも、その警官のことを同僚の婦人警官も好き。さぁ、どうする。いやぁ、どうもしない。

 ただのドタバタコメディーなんかではない。ちゃんとした会話劇である。いつものクロムとはひと味違う。役者たちがきちんと話をしてる。でも、ほんとうにどうでもいいことで、くだらない。無意味もここまでやられると、強烈で、凄いことではないか。ラストだってオチがない。オチないのに終わる。マネキンではオチません。でも、ただくだらないことをしているだけではありません。そんなことされても、普通なら腹が立つだけのはずだ。でもこれには腹は立たない。呆れるけれども、引き込まれる。いいかげんな芝居に見えてそれを徹底させるから、なんとも気持ちがいい。青木さんはこういうことをやりたかったのだろう。だから、そういうことをやりきったのでよかったと思う。

 なんとも納得のいく芝居だ。特別なことは何もない。物足りないくらいにあっさりだ。恋愛なんてものがもともとくだらない。『恋する剥製』は『恋する惑星』に似ている。これはウォン・カーウァイのあの作品へのオマージュなのか。まぁ、それはないかぁ。

 無意味を極めると、ただの無意味にしかならないから、占いなんか、嘘ばっか。恋愛なんて自由自在。みんなでこのなんでもありの芝居に打ちのめされよう! くだらないくらいにおもしろい。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 劇団きづがわ『通りゃんせ ... | トップ | 劇団大阪『遠くの戦争 ~日... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。