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映画・演劇のレビュー

Zsystemプロデュース『夜明ケノ始マリニ、僕タチハ嘘ヲツイタ‥』

2007-09-23 19:56:49 | 演劇
 幕末の志士、坂本竜馬と高杉晋作が140年後の現代にタイムスリップしてくる、なんて話はたぶん今まで何度もいろんなところで作られてるのではないか?記憶にはないがきっとありそうだ。それくらいに新鮮味のないお話なのである。

 なのに敢えてそんな素材に取り組んだのはなぜだろう。この芝居の仕掛けは彼らが、迷い込んだところが小劇場の芝居小屋で、竜馬、晋作を主人公にしたお芝居の公演を1ヶ月後に控えた現場であるということ。しかも、主人公のオーディションの場に飛び込んできて、見事合格してしまう。

 普通に考えたら、これはエンタメ系が大好きなシチュエーション・コメディーでしかない。しかし、この芝居はそうはならない。なんだか教育番組でも見てるような気分にさせられるのだ。真面目すぎるくらいに真面目に作られている。タッチも軽くなく、重厚で実に丁寧な描き方をしている。2時間以上の上演時間はそのせいであろう。全体のテンポは遅く、役者が、もの凄く《ため》を作りまくっていて、驚かされる場面もある。

 丁寧で浮ついた描写もなく、こんなにも真面目な芝居って珍しい。何よりもまずきちんとした芝居を作ろうという作り手の熱意が感じられる。中川浩三さんを中心として集まったメンバーは、ベテランを核にして、たくさんの若い役者たちがそれを取り囲むようにして構成されてある。この集団がどういう経緯で生まれたのかはよく分からないが、この作品自体は好感の持てるものだった。ただ、その真面目さがあまり上手く機能していない。

 まず、ストーリーの核心に入るまでが長すぎるのは問題だ。幕末と現代という2つの時間を並行して描く前半は1時間くらいあったのではないか。ここはあくまでも導入でしかないはずなのに、ここでこれだけの尺を使うのはもったいない。思い切ってここまではばっさり切ってしまったほうがいいのではないか。後半、2人が現代にやってきてからの部分をもう少し膨らませたほうがバランスもいい。描きたいことはそれでも伝わるはずだ。タイトルの「嘘ヲツイタ」という部分に込められた優しさと、彼らの熱い思いさえ伝わればいいはずだ。それならば、後半の話の中ででも充分語りうると思うのだが。

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