今回はいつもの浦部、安部のオリジナルではなく、新しい作家を台本に起用して、従来のNGRとは一線を画す舞台を見せてくれる。全体的には、とてもさらりとした感触の残る舞台に仕上がっているのもいい。いつものような粘っこい突き詰め方をしていかない。軽やかに流してしまう。もちろん、それでもNGRなので、必ずしも美しいだけでなく、ベタベタの展開もある。それでなくては、納得しない観客もいるのだろう。横道にそれてしまって、なかなか戻って来ないこともいつものことだ。テント芝居だから、そういう遊びがなくてはつまらない。しかし、本質の部分がそれによって殺がれてしまうことはない。浦部さんはオリジナルのよさを自分の個性で消してしまうことがないようにきめ細やかな配慮をしている。
さて、その本質の部分なのだが、多分に少女マンガ的で、情感に流されるだけなので、内容に奥行きが感じられない。キレイだけどペラペラなのである。それに肉付けを施したなら、それでは浦部さんのいつもの台本になってしまう。今回は安藤十和子さんの作品世界を壊さないということを第1条件にして演出したのであろう。台本との距離の取り方も悪くはないのだが。
ミチ(森岡さかえ)とキリ(織田拓已)の姉弟の話を核にして、介護と看護の問題を中心に据えながら話は展開していく。カントクと呼ばれる老人(本多信男)の昔話の中で描かれる『贋作・星の王子さま』という映画は、彼の幻想でもあり、現実でもある。
芝居はこの映画を巡るお話として、展開するのだが、この映画が幾つもの変容を遂げて、やがてはミチとキリの話も飲み込んでいく。劇中劇の王子さまと、若き日の自分自身が旅をしていく。カントクが初めてメガホンを撮った作品であるその映画を巡る思い出のはずが、そんな映画は彼の幻想でしかないはずなのに、現実となっていく。
全体的にいつもならもう一歩踏み込んで描くべきところを、一歩手前で留めてある。それは原作者への浦部さんの遠慮のようにも見えるが、必ずしもそれだけではない。あっさり見せることで、この物語との距離をしっかりとろうとしているのだ。全体の流れと絵としての美しさをとても大事にしている。いつもながらのラスト、借景の中の織田くんがとてもかっこよく、舞台上の関角さんの王子さまがバラの中に身を潜める姿との対比も美しい。
カントクの想いだけでなく、姉の棄ててきてしまった弟への純粋な想いのほうに重きを置いて、全体を纏めていく。この両者のバランスの取り方が今回の1番のポイントとなっている。
ほんとは、医療、介護問題について、病院の改革に絡めてもう少し踏み込んで描いてもよかったかもしれない。これでは病院は舞台設定以上のものにはなってない。自分が介護してきた弟への想いと、そこから逃げてきてしまったことの痛み。彼女がこの新しい病院で老人の看護をしながら、彼の心の中にある風景を体験していくことによって、主人公である王子さまと弟のイメージを重ねていくことになる。その果てに見たものが、この芝居のテーマとなっていくのだが、とても美しいエンディングは、そのテーマを突き詰めていくのではなく、ドラマを完結させるという次元で終わっているのが残念だ。その結果呼応する2つの魂は、一人ぼっちの星の王子さまの心の風景の中に綺麗に収斂されていくことはない。
さて、その本質の部分なのだが、多分に少女マンガ的で、情感に流されるだけなので、内容に奥行きが感じられない。キレイだけどペラペラなのである。それに肉付けを施したなら、それでは浦部さんのいつもの台本になってしまう。今回は安藤十和子さんの作品世界を壊さないということを第1条件にして演出したのであろう。台本との距離の取り方も悪くはないのだが。
ミチ(森岡さかえ)とキリ(織田拓已)の姉弟の話を核にして、介護と看護の問題を中心に据えながら話は展開していく。カントクと呼ばれる老人(本多信男)の昔話の中で描かれる『贋作・星の王子さま』という映画は、彼の幻想でもあり、現実でもある。
芝居はこの映画を巡るお話として、展開するのだが、この映画が幾つもの変容を遂げて、やがてはミチとキリの話も飲み込んでいく。劇中劇の王子さまと、若き日の自分自身が旅をしていく。カントクが初めてメガホンを撮った作品であるその映画を巡る思い出のはずが、そんな映画は彼の幻想でしかないはずなのに、現実となっていく。
全体的にいつもならもう一歩踏み込んで描くべきところを、一歩手前で留めてある。それは原作者への浦部さんの遠慮のようにも見えるが、必ずしもそれだけではない。あっさり見せることで、この物語との距離をしっかりとろうとしているのだ。全体の流れと絵としての美しさをとても大事にしている。いつもながらのラスト、借景の中の織田くんがとてもかっこよく、舞台上の関角さんの王子さまがバラの中に身を潜める姿との対比も美しい。
カントクの想いだけでなく、姉の棄ててきてしまった弟への純粋な想いのほうに重きを置いて、全体を纏めていく。この両者のバランスの取り方が今回の1番のポイントとなっている。
ほんとは、医療、介護問題について、病院の改革に絡めてもう少し踏み込んで描いてもよかったかもしれない。これでは病院は舞台設定以上のものにはなってない。自分が介護してきた弟への想いと、そこから逃げてきてしまったことの痛み。彼女がこの新しい病院で老人の看護をしながら、彼の心の中にある風景を体験していくことによって、主人公である王子さまと弟のイメージを重ねていくことになる。その果てに見たものが、この芝居のテーマとなっていくのだが、とても美しいエンディングは、そのテーマを突き詰めていくのではなく、ドラマを完結させるという次元で終わっているのが残念だ。その結果呼応する2つの魂は、一人ぼっちの星の王子さまの心の風景の中に綺麗に収斂されていくことはない。