昨年の文藝賞を獲った作品。凄いスピードで駆け抜けていく中学生の物語。イライラをどこにぶつけたらいいか、わからないまま暴走する。それを作者もまた全力疾走でラストまで一気に見せる。読ませる。しかもあのまさかの終わり方。こんなところで終わってしまうのか、と驚く。まだ何も始まってないやん、と思う。だけどこれはこれでいい。道半ばで立ち止まってしまう瞬間にエンドマークが出る。見事だ。
最近映画や小説を見ていて、読んでいて、これのどこで終わらせるのか、と気になることが多い。残りのページ数が、残りに上映時間が気になりつつ、読んでたり、見てたりすることがよくある。決してつまらないから、とかいうわけではなくそれどころかとても面白いにもかかわらず、である。
東京にカチコミに行き、何もできないまま北九州に帰ってくる途中の高速バス。衝動的に女たちの車に乗って、わけのわからないままキャンプ村に向かう。尊敬していた憧れの先輩橘さんへの想いをクラスメイトの田中杏奈から同性愛だね、と揶揄われてキレるけど、ほんとの想いは自分にもよくわからない。憧れや尊敬という言葉だけでは伝わらないこと。だから失望は大きかった。
14歳の無敵の犬は人を殺してもいい、というまで一気に一途に暴走する。その先には何があったのか。もちろんそれは描かれない。熱いエネルギーの塊をぶつけられた。参ったなぁ、と思う。でもなんだかいい気分だ。