エッセイ&ルポルタージュによる1冊。このふたつを抱き合わせにするなんて珍しいパターン。ノンフィクションライターの佐々さんが自分のことを赤裸々に綴ったエッセイと短編ノンフィクションをまとめて1冊にした。かなり個人的な1冊である。
なぜ自分は書くのか。何を求めているのか。これまで生きてきたこと、これから向かうところ。今立つ場所を再確認するための1冊である。どのエピソードも胸に痛いが、無量という僧侶を描く『会えない旅』が一番刺さった。彼女の想いと取材対象である彼の気持ちが交錯し,交わらない瞬間が心に沁みた。
衝撃的なあとがきのことにはここでは触れない。彼女に来し方行く末に触れられる。個人的なエッセイでありルポルタージュだ。ふつうはこんなにもプライベートに揺れない。とくに他者に取材するルポルタージュでここまで自分は描かない。だけど彼女はぐいぐい入ってくる。母親のこと、自分のこと。それが今の彼女にとって何よりも大事なことだからだ。読んでよかった。勇気が出る。