先月沖縄に行った時、町田そのこの『ぎょらん』をたまたま読んだ。読む本がなくて妻が持ってきた本を借りた。長い小説だったのに2日で読み終えた。暗いけど、とてもいい作品だった。以前に『52ヘルツのクジラたち』からの何冊かを読んでいたが、久しぶりに読んだ町田そのこ本が心に沁みた。
今回もまた彼女が借りてきたから読むことにした1冊である。5話からなる短編集だ。ひとつひとつが胸に痛い。傷ましい物語が、心に沁みる。相変わらずの町田節。心が弱くなった女たちが自分をゆっくり取り戻す姿が描かれる。そこには身近な人の死がある。ひとつだけ死者が出てこない作品もあるけど、そこにも濃厚にその気配はある。大好きな祖母から愛人の妻まで。彼女たちはそんな人の死と向き合い、生きる希望を取り戻す。
最後の1編は高校生の男女の話で、それまでとは少しタッチが異なって明るい話。だけどここにも死は潜んでいる。もうすぐターミナルケアの病院に入るおばあさんの断捨離の手伝いをする話。ここではおばあさんの初恋と主人公の私の初恋が描かれる。幾分ほっとする話になっている。