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映画・演劇のレビュー

あさのあつこ『バッテリー』6

2007-05-27 09:38:46 | その他
 終わった。ラスト1巻は一気に読んだ。読書は通勤のための往復の時間だけ、というのが原則なのだが、今回は掟破りしてしまった。

 巧と豪が最後にはどこに行き着くのかが、気になったからだ。これは大河ドラマだと思っていたが、なんとだいたい1年間の時間に限定した話だった。映画はちゃんと6巻のラストまでを完全映画化していたのだ。6冊を2時間に抑え、ラストままで全く同じ。横手2中と新田東の再戦で終わる。

 原作のこのほろ苦さは、あの映画の爽やかさとは、全く違うことは何度もこのブログで書いてきた。悲壮感漂うラストは、それでもこの瞬間にすべてを賭けて戦うという意味では映画と変わる事はない。

 彼らの未来は決して明るくない。14歳の子供なのに、こんなにも苦しんで野球をしなくてはならないなんて、可哀想だなと思う。だけれども、彼らは決して不幸ではない。豪の顔からは、あの無邪気な笑顔は消えてしまったが、それでも巧の球を受け続ける。巧も同じだ。豪に対しても野球に対しても無邪気ではいられない。以前のように一人で野球をしているとはもう思えなくなってしまったから。しかも、誰も彼を助けてはくれない。(もちろん、人の助けなんて彼は欲しくないだろうが)

 ここまで屈折した小説だとは思いもしなかった。あの映画とはあまりにイメージが違いすぎる。しかし、この小説は間違っていない。このテーマを突き詰めていけばこういうことになってしまうのは自然の摂理かもしれない。2人が傷つき、それでも野球を続ける姿は感動を呼ぶ。

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