2時間の長さを全く感じさせない芝居だった。だいたい座り芝居が多く動きも少ないから、単調になりそうなのに、こんなにも緊張感溢れる芝居として、立ち上げられたことに感心した。8人の女たちが、ひとりとして脇役に甘んじることなく、それぞれがこの芝居の重要なポジションを担う。それは、演出家が、役者たちのことをよく理解しており、全体の構成力も併せ持っていることの証明であろう。作、演出の京ララ(まとば小鳩)が作家である以上に役者であることが、功を奏している。
主人公の母親や4人姉妹、謎の女、だけでなく、手伝いに来ている2人まで、全てが、この芝居のキーマンとして、舞台の一翼を担っているのだ。これは簡単なことではない。ストーリーの流れを損なうことも、役者のための単純な見せ場作りのためだけのシーンもないのに、そんな風に作れてある。見事である。もちろん紅一点ならぬ黒一点(?)の田口哲もいい味を出している。
オヤジの通夜から始まり、葬儀の翌朝まで。そんな中で四人姉妹の確執、母親の想い、そして偶然こんな夜に訪ねて来た一人ぼっちの女。それぞれの気持ちが交錯する。ハート・ウォーミングなのだが、ただの甘い芝居にはならない。だが、今では失われてしまった下町の人情のようなものがしっかり描かれてある。微笑ましい。ララさんがこんなにも優しい芝居を作るなんてなんだか不思議だ。
彼女の描く狂気の世界が大好きだったから、正直言うと少し物足りない。しかし、この作品は今の彼女の成長振りがしっかり伺える佳作だ。小津安二郎を引き合いにだすのは、気が引けるが、ララ版オズと敢えて言いたいような作品である。彼女お得意の毒は、原典子の小学教師山口が担う。人を信じてしまうこの家の母親(ハラダマサミ)に対する反発、ハサミを巡るラスト。そこがララさんらしい。実は、山口と母を対極に置いて、ドラマは構成されている。それが、この芝居の底辺に流れているから、ただの甘い芝居にはならないのだ。他者に対して攻撃的にしかならない現代人の性は、時代が作ってしまったものだ。子供たちですら、自己中心的な発想しかしない中、山口は自分を正当化しつつも、そんな自分に不審感すら抱いている。だが、そこを譲ると彼女自身のアイデンティティーすら壊れかねない。自分は正しいと思う。だから、この母親を見ているとイライラする。自分が間違っていることは本当は解っている。なのに、素直になれない。そんな彼女が狂気に走るのを、芝居は優しく包み込む。
4人姉妹のポジション取りも的確だ。長女との確執をさらりと流すのも賢明な処理だ。そんなところには問題はない。謎の女の部分がちょっと説明過多となったのは惜しまれる。解りやすさのラインを何処にとるかは微妙である。今回は全体的に観客に優しすぎる。
もちろん単純な「温かい家族愛の物語」ではない。だが、死んでしまった夫、であり父である男の人柄を通して家族というもののひとつの形をしっかり描いてみせる。けっして難しい芝居ではないが、単純に家族をステロタイプにも当てはめない。
主人公の母親や4人姉妹、謎の女、だけでなく、手伝いに来ている2人まで、全てが、この芝居のキーマンとして、舞台の一翼を担っているのだ。これは簡単なことではない。ストーリーの流れを損なうことも、役者のための単純な見せ場作りのためだけのシーンもないのに、そんな風に作れてある。見事である。もちろん紅一点ならぬ黒一点(?)の田口哲もいい味を出している。
オヤジの通夜から始まり、葬儀の翌朝まで。そんな中で四人姉妹の確執、母親の想い、そして偶然こんな夜に訪ねて来た一人ぼっちの女。それぞれの気持ちが交錯する。ハート・ウォーミングなのだが、ただの甘い芝居にはならない。だが、今では失われてしまった下町の人情のようなものがしっかり描かれてある。微笑ましい。ララさんがこんなにも優しい芝居を作るなんてなんだか不思議だ。
彼女の描く狂気の世界が大好きだったから、正直言うと少し物足りない。しかし、この作品は今の彼女の成長振りがしっかり伺える佳作だ。小津安二郎を引き合いにだすのは、気が引けるが、ララ版オズと敢えて言いたいような作品である。彼女お得意の毒は、原典子の小学教師山口が担う。人を信じてしまうこの家の母親(ハラダマサミ)に対する反発、ハサミを巡るラスト。そこがララさんらしい。実は、山口と母を対極に置いて、ドラマは構成されている。それが、この芝居の底辺に流れているから、ただの甘い芝居にはならないのだ。他者に対して攻撃的にしかならない現代人の性は、時代が作ってしまったものだ。子供たちですら、自己中心的な発想しかしない中、山口は自分を正当化しつつも、そんな自分に不審感すら抱いている。だが、そこを譲ると彼女自身のアイデンティティーすら壊れかねない。自分は正しいと思う。だから、この母親を見ているとイライラする。自分が間違っていることは本当は解っている。なのに、素直になれない。そんな彼女が狂気に走るのを、芝居は優しく包み込む。
4人姉妹のポジション取りも的確だ。長女との確執をさらりと流すのも賢明な処理だ。そんなところには問題はない。謎の女の部分がちょっと説明過多となったのは惜しまれる。解りやすさのラインを何処にとるかは微妙である。今回は全体的に観客に優しすぎる。
もちろん単純な「温かい家族愛の物語」ではない。だが、死んでしまった夫、であり父である男の人柄を通して家族というもののひとつの形をしっかり描いてみせる。けっして難しい芝居ではないが、単純に家族をステロタイプにも当てはめない。