習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『少女たちの羅針盤』

2012-03-08 20:33:23 | 映画
 ものすごく期待していたから、ちょっとはぐらかされた気分だ。先に書いた水沢秋生の『ゴールデンラッキービートルの伝説』が、本来この映画が描くべきことを描き切ってしまった気がする。偶然同じタイミングで、読んだだけなのだが、あの小説の感動と同じ質のものを、僕はこの映画に期待していたのだ。ミステリータッチで話が進行していくのは、構わない。だが、高校時代のエピソードには、もう少しのリアルさが欲しい。

 高校の演劇部で、うまくやっていけなかった4人が自分たちだけで劇団を作り、ゲリラ的に路上ライブを繰り広げる。そこにたくさんの人が集まり、そんな評判から彼女たちは芸能プロが主催する演劇コンクールに参加するチャンスを手にする。バンドならこういうのもありだと思うが芝居ではかなり難しいのではないか。大体高校生による街頭劇なんかに人が集まるのだろうか。芝居って集中力が必要だから、音楽以上に人を立ち止まらせるのは困難だ。コントのようなもので、観客の関心を集めるためには、かなりの技術が必要だろう。かわいい女の子四人組による街頭劇がネットを介して評判を呼ぶ、という展開はありそうだし、その設定自体はおもしろい。それだけに、そこをちゃんとリアルなものとして描いてもらいたかった。

 現在の時間として描かれる映画の撮影もなんだか、嘘くさくて、映画全体に説得力がない。さらには殺されたメンバーの謎を描く核心部分がそれに輪をかけて嘘っぽい。だから、その結果、このままではこの映画のすべてが信じ切れないものになるのだ。

 長崎俊一監督作品だから絶対おもしろい、と楽しみにしていたのに、こんなこともあるのだなぁ。そういえば彼は今までも「ミステリーもの」を手がけると結構失敗していることを思い出した。(名取裕子が主演した『妖女の時代』だ。あれはかなりつまらなかった。でも、それっていつの時代の話だ?)だいたいこれはミステリーではない。少女時代の熱い想いを描くドラマなのだと思う。なのに安易なミステリー仕立てにするから、中途半端なものになるのだ。なんかもったいない。

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