3人の少年少女が偶然同じクラスになり、過ごす一瞬の時間を描く。でも、その一瞬が永遠になるラストシーンが感動的だ。小学6年の始まりから、突然の別れまで。幸せな時間はずっと続けばいいと思う。でも、そんなことは不可能だ。それくらい子供にだってわかる。でも、できるならこの幸福が永遠であって欲しい。
ヨータとジュンペイは、今年も同じクラスになった。小学校最後の1年だ。ジュンペイはよかったなぁ、と思う。でも、ヨータは相変わらずで、ぼぉっとしている。新しいクラスにはもちろんいろんな奴がいる。そんな中に魔女とあだ名をつけた少女がいた。誰とも付き合わない転校生だ。偶然のことから、2人は彼女となかよくなる。これはそこから始まる物語だ。よくある話だ。でも、定番とは微妙に違う。そこがいい。
2人の秘密基地で、彼女と会う。廃車のワーゲンで過ごす時間。3人だけの秘密。彼らはお互いに相手の心の中に踏み込まない。人にはそれぞれ知られたくないことがある。それはたとえ友達であったとしても踏み越えてはならない領域だ。彼らは幼いのに、そのことをよく知っている。だから、こんなにもなかよくなれる。時間をかけてゆっくりと、お互いの存在が心地よいものとなっていく。そんな時間を描く。
事件はある。うさぎ事件だけではない。なんと拳銃を彼らが手にするのだ。さらには壊れた自動車を動かす。でも、そんな思いもしないような大事件も、彼らの日常の中にちゃんと埋もれていく。現実の世界ではこんなドラマのような展開はないはずだ。だが、この小説は嘘のようなそんな話を散りばめながら、不自然にはならない。作られたお話でしかないような、そんなエピソードの数々が、特別なこととしてではなく、描かれる。嘘が本当のように描かれるのではない。嘘そのものがちゃんと彼らの生活に溶け込むのだ。なんだか不思議なタッチで。
それは3人を囲むクラスメートの現在のエピソードと平行して全体が描かれることも影響しているのかもしれない。過去の話はすべて思い出でしかなく、それはもう20年以上の時が経ち、本当と嘘との境すら定かではないものとなっているから、なのかもしれない。あの頃、輝いていた時間。それをリアルタイムの感触で描きながら、そのすべてをこの小説は思い出として相対化している。そんな微妙なさじ加減がすばらしい。3人の周囲にいたはずのクラスメートのそれぞれのエピソードも胸に痛い。時の流れは無常だ。
だからラストで、ようやく3人の現在が描かれたとき、そこに描かれる奇跡が胸に沁みてくる。ありえないような偶然は、この「お話」が用意したもの、ではなく、ちゃんとこれまで自分の人生を生きた彼らへの御褒美なのだ。離れてしまったら、もう忘れてしまう。どんなに仲がよかった仲間であろうとも、時の流れに流されて、別々の場所で、別々の時間を生きるうちに、あの頃あんなにも大事だったことすら忘れてしまう。でも、果たしてそうなのか? 忘れることのない大事なものは確かにある。この小説はそのことを教えてくれるのだ。ラストでは泣ける。
ヨータとジュンペイは、今年も同じクラスになった。小学校最後の1年だ。ジュンペイはよかったなぁ、と思う。でも、ヨータは相変わらずで、ぼぉっとしている。新しいクラスにはもちろんいろんな奴がいる。そんな中に魔女とあだ名をつけた少女がいた。誰とも付き合わない転校生だ。偶然のことから、2人は彼女となかよくなる。これはそこから始まる物語だ。よくある話だ。でも、定番とは微妙に違う。そこがいい。
2人の秘密基地で、彼女と会う。廃車のワーゲンで過ごす時間。3人だけの秘密。彼らはお互いに相手の心の中に踏み込まない。人にはそれぞれ知られたくないことがある。それはたとえ友達であったとしても踏み越えてはならない領域だ。彼らは幼いのに、そのことをよく知っている。だから、こんなにもなかよくなれる。時間をかけてゆっくりと、お互いの存在が心地よいものとなっていく。そんな時間を描く。
事件はある。うさぎ事件だけではない。なんと拳銃を彼らが手にするのだ。さらには壊れた自動車を動かす。でも、そんな思いもしないような大事件も、彼らの日常の中にちゃんと埋もれていく。現実の世界ではこんなドラマのような展開はないはずだ。だが、この小説は嘘のようなそんな話を散りばめながら、不自然にはならない。作られたお話でしかないような、そんなエピソードの数々が、特別なこととしてではなく、描かれる。嘘が本当のように描かれるのではない。嘘そのものがちゃんと彼らの生活に溶け込むのだ。なんだか不思議なタッチで。
それは3人を囲むクラスメートの現在のエピソードと平行して全体が描かれることも影響しているのかもしれない。過去の話はすべて思い出でしかなく、それはもう20年以上の時が経ち、本当と嘘との境すら定かではないものとなっているから、なのかもしれない。あの頃、輝いていた時間。それをリアルタイムの感触で描きながら、そのすべてをこの小説は思い出として相対化している。そんな微妙なさじ加減がすばらしい。3人の周囲にいたはずのクラスメートのそれぞれのエピソードも胸に痛い。時の流れは無常だ。
だからラストで、ようやく3人の現在が描かれたとき、そこに描かれる奇跡が胸に沁みてくる。ありえないような偶然は、この「お話」が用意したもの、ではなく、ちゃんとこれまで自分の人生を生きた彼らへの御褒美なのだ。離れてしまったら、もう忘れてしまう。どんなに仲がよかった仲間であろうとも、時の流れに流されて、別々の場所で、別々の時間を生きるうちに、あの頃あんなにも大事だったことすら忘れてしまう。でも、果たしてそうなのか? 忘れることのない大事なものは確かにある。この小説はそのことを教えてくれるのだ。ラストでは泣ける。