1時間50分が長いって感じるのは、お約束に縛られて説明のためのストーリー回収に終始するからだ。今回はちょっと殺陣のシーンが短めに設定されていた気がしたが、それはストーリーの収拾に手間取ったからか。大衆演劇は完全に定番なので、本来説明はいらない。なのに、今回は不思議にもたもたしている。この手の作品は、説明よりも、個々のキャラクターを立たせる見せ場をしっかり作り、観客を満足させられたならばそれでいいはずなのだが。(両手両足を切り落とされた水野忠邦の娘とか、とんでもな展開を平然とやってしまうところは神原さんらしくていいのだが。)
そのためには役者の華がいる。神原さんはそのことをしっかり理解して台本を作り、演出しているのだが、個々の役者たちがその期待に応え切れていないのが残念だ。もっとみんな弾けて欲しい。これは段取りパターンの芝居の王道をいく作品なのだ。
今回の起爆剤はめりの起用にある。お姫さまである! このまさかの(すみません)キャスティングで見せることが出来るのは、ハレンチキャラメルしか、あるまい。神原さんの手に掛かるとそういう無謀な無理が(すみません!)可能なのだ。なのに、期待の最終兵器である彼女があまりにおとなしすぎて、お話が思ったほどには弾けないのだ。もちろん彼女には正統派のお姫さまを演じてもらいたい。だが、それでも、彼女の迫力がふつうのお姫さまに収まるわけはない。そこで、作者の意図を超えたところにまで役者が暴走しなくてはつまらない。彼女がもっと輝くように作れたなら、よかった。そこに島上さんの双子二役も連動して、その時この作品は輝く。夕暮れから夜にかけての短い時間に凝縮させたロマンをもっと堪能したかった。
次の最終章(来年の10年目、第10回公演で散会するらしい)に期待したい。