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映画・演劇のレビュー

『本能寺ホテル』

2017-01-18 23:02:21 | 映画
鈴木雅之監督の『プリンセストヨトミ』は、原作には及ばないけど、とてもよくできた娯楽大作だった。今回彼は再び同じキャストを使い、この歴史大作に挑んだ。コンセプトは同じで、舞台が大阪から京都に移し、豊臣から織田信長に変わる。



今を生きるふつうの女性が偶然から歴史の大きな分岐点に立つことになる、というお話だ。それをコメディタッチで見せていくのも前作を踏襲している。ただ、前作は万城目学の原作があったけど、今回は相沢友子によるオリジナル台本である。リスクはい大きいけど、より映画らしいアプローチができる。これはちょっとした勝負作ではないか。



本能寺の変の前日にタイムスリップした綾瀬はるか演じる女性が、信長(堤真一)と出会い、彼をほのかに好きになり、なんとかして彼の命を守ろうとする、というお話なのだが、つまらない恋愛映画になんかしない。ふたりの関係の微妙さがこの映画の上手さだ。彼女は自分の気持ちに気づかない。だが、映画のラストで婚約者に「好きな人ができたのか、」と聞かれ「うん」と答える。そんなさりげないシーンがこの映画のよさだ。



歴史を変えることはできたはずだ。しかし、信長は自分の運命を受け入れる。天命だと思う。抗わない。彼女はそんな彼を素敵だと思う。自分にはやりたいことがない。だから、言われるまま結婚しようと、思っていた。だが、現実世界で婚約者の父親である近藤正臣のじいさんと出会い、さらには運命のいたずらから信長と出会い、そのふたりに導かれて、自分の人生を考えることになる1泊2日の物語。そういうさりげなさが、この映画の魅力だ。



映画はスペクタクルも用意するけど、そこが力点ではない。台本の妙だろう。20代後半の女の子のちょっとした旅。京都旅行として全体を構成した。鴨川沿いを何度となく歩くシーンがある。そんな何でもないシーンが素晴らしい。そんな京都観光も悪くない。なんとなくの町歩き。それによって京都の魅力をちゃんと伝える。安上がりの贅沢さ。ホテルでパンフをもらってなんとなくブラブラする。これはそんな映画なのだ。
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