16年ぶりの新作だという。いとうせいこうは、そんなにも長く小説から離れていたのだ。そして、そんな彼にとって今回の「震災」という事件は大きかった。だから、どうしてもこの小説を書かせざるを得なくなったのだろう。
だが、これは使命感ではない。彼は自然に、この祈りのようなドラマを紡いでいたのだろう。それは主人公のDJアークが放送を始めたことと同じだろう。
震災によって亡くなられたたくさんの魂に向けて、この小説は発信される。もちろん亡くなられた人々はもうこの小説を読むことはかなわない。だが、いとうせいこうは彼らに届けたい。あなたはひとりぼっちではない、ということを。今もなお、遺体が上がらないたくさんの方々がいる。どこかでひっそりと、誰にも知られることなく朽ち果てていく。魂は天に昇る。肉体は地に還る。だけど、そこにいた、たくさんの誰かに届けたい。これはあの日、一瞬で奪われたそんなたくさんの命へのレクイエムである。
木の上から想像力を駆使して届けるメッセージは、同じように亡くなった人たちに贈られる。彼のかすかな声は、耳をすませる人々に届く。彼らもまた自分の声を彼に向って発信する。これはラジオのDJとリスナーの幸福な関係を模して語られる命の歌だ。
だが、これは使命感ではない。彼は自然に、この祈りのようなドラマを紡いでいたのだろう。それは主人公のDJアークが放送を始めたことと同じだろう。
震災によって亡くなられたたくさんの魂に向けて、この小説は発信される。もちろん亡くなられた人々はもうこの小説を読むことはかなわない。だが、いとうせいこうは彼らに届けたい。あなたはひとりぼっちではない、ということを。今もなお、遺体が上がらないたくさんの方々がいる。どこかでひっそりと、誰にも知られることなく朽ち果てていく。魂は天に昇る。肉体は地に還る。だけど、そこにいた、たくさんの誰かに届けたい。これはあの日、一瞬で奪われたそんなたくさんの命へのレクイエムである。
木の上から想像力を駆使して届けるメッセージは、同じように亡くなった人たちに贈られる。彼のかすかな声は、耳をすませる人々に届く。彼らもまた自分の声を彼に向って発信する。これはラジオのDJとリスナーの幸福な関係を模して語られる命の歌だ。