これは6話からなる短編集。犯罪小説集とある。それからパンデミック。コロナ禍が舞台となる。今人気爆発の一穂ミチだが、今回はかなり残念。
まず前半3篇を読んだ。死者がやって来て、生きている人たちに罪を思い出させる。人を殺した女の話もある。自らの手で殺す。後悔はある。だから出てくる。死んだ者が、出ることもある。生きているけど後悔に苛まれる。毎日ストレスを溜め込んで気がついたら、ぼろぼろになっていたから。だから何かに縋り付くことになる。デリバリーの男前の青年に心惹かれて、毎日ウーバーを頼む。
発想は悪くはないけど、あまりに単純で安易な展開にはガッカリした。安い深夜TVドラマを見ている気分。あるいは『世にも奇妙な物語』のような怪奇短編に近い。
後半の3作品は死者は出てこないし、誰も死なない普通の短編になる。近所に住んでるひとり暮らしの老人の話と認知症が心配な母親の話。最後はネットで知り合った他人同士が練炭自殺する話。よくある話まで。予定調和の作品ばかりで悪くはないけど、あまり面白くはない。