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映画・演劇のレビュー

ジャブジャブサーキット『死立探偵』

2008-10-06 22:03:45 | 演劇
 今回はとても軽めの芝居になっている。探偵もので、もちろんミステリー仕立て。(はせさんがいかにも好きそうな設定だ)ただ、この主人公、あと半年の命で、しかも、今少しずつ記憶を失っていっている。このまま自分が誰なのかすらわからなくなるのか。そんな設定の下、お話は展開する。

 死をテーマにしているのに軽いタッチの作品になっていて、ラストも含めてとても爽やかなのもいい。久々に栗木己義さんが主演。彼がけっこうよくある「イメージどおりの探偵」を演じている。お話もパターンでそんな中、芝居は心地よく進行していく。

 謎の女依頼人(咲田とばこ)の登場。「これから失踪する私を見つけて欲しい」だなんていうふざけた依頼をして、そのまま消えてしまう。彼は病気のこともありもう仕事は辞めていたのだが、この最期の事件をしかたなく引き受けることになる。

 芝居は当然ながら、舞台となる喫茶店から1歩も出ない。しかも、彼が表に立って謎を解いていくわけでもない。彼の周囲の仲間たちを通してそれを見せるのだ。もちろんそこがこの芝居の仕掛けである。さらにはすべての謎解きも含めてとてもスマートに出来ている。

 知らぬ間に静かに消えていくこと。そのために自分で自分に仕掛けた事件。そこを中心にして話は作られてあるが、この芝居自体の1番の魅力はそういうストーリーにあるのではなく、彼らが集うこの空間の方にある。探偵とマスター(はしぐちしん)との関係、そして彼をとりまく人間模様。みんなが彼を好いていて、そこに生ずるとても優しくて穏やかな人間関係の機微を捉えることの方に重点が置かれている。これもいつもながらのはせさんワールド。

 北村想さんの原案を得て作られた芝居はいつもなんだかすこしドライな仕上がりを見せる。遊びの要素もいつも以上にある。そんな中で人が死んでいくとき、どんな風に消えていくことが理想なのかが描かれていく。とても軽やかな幕切れが気持ちいい。そんな作品だ。

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