第4回ポプラ社小説新人賞受賞作、ということらしい。まぁ、そんなことはどうでもよろしい。要はおもしろいか、どうか、だ。賞はその指針になるのならいいし、まぁ、普通はあまりならないから信じない方がいい。
で、僕だが、この風変わりな小説に魅了される。いろんなものの棺桶を売る雑貨屋って、どうよ、と思うけど、そういう奇抜な発想が巧く機能する。なんでもないお話なのに、なんだか不思議な感触を与えるからだ。恋人に振られて泣きに泣く女、妙。彼女を招き入れて、(猫か「何か」か?)何かと構う女、菫。妙は菫の雑貨屋で働くことになる。
これはそんな女2人の毎日を描く。やがて妙はなんと菫さんの離婚した旦那と恋人になる。どうしてそんなことになるのかというと、まぁ、いろいろあるわけだ。取引先のボタン屋の男が菫のもと旦那で、妙は最初そんなこと知らなかった。知らないまま、その優しい男に心惹かれる。更には彼と菫のふたりの子供である蓮太郎20歳も含めて、なんだかよくわからないまま、いろんなことが起こるような起こらないような。
こういうゆるくて、へんてこなハートウォーミングが、今はなぜか、心に沁みる。でも、こんなのばかり読んでいて毎日小説にばかり癒されていて、それってどうよ、とも思う。優しい人たちが、ダメな自分を構ってくれる。しかも、とても自然に。現実ではそんな都合のいいことはなかなかないはずだ。でも、映画や小説ではよく起きる。心地良い時間に満たされて、ひきこもるのもなんだかなぁと思うけど、仕方ない。
たまたま読んだ本がそんな本ばかりなのだから、ちゃんと本に癒されていいかぁ、と思う。