これだけの映画が1日1回しか上映されていない。しかも、シネコンの一番小さな劇場で。もちろん最初の1週はちゃんと大きなスクリーンで上映されていたけど、2週目からは縮小され、見に行くのが困難になり、ようやく先週の土曜に朝イチで見れた。見てよかった。2時間33分があっという間だった。
僕は別に車には関心はない。でも、大丈夫だ。これはそれだけの映画ではない。カーレースを扱うけど、2人の男の闘いのドラマだ。マット・デイモンとクリスチャン・ベールが素晴らしい。お互い自分を曲げない。ふたりは向かい合う。だが、これは彼らのバトルではない。それどころか彼らは共闘して戦うのだけど、その戦いはこの映画のタイトルほど単純ではない。だから、おもしろいのだ。レースシーンの迫力もさることながら、そっけなくお話は進むのに、その手に汗握る展開のうまさには舌を巻く。だからスクリーンからは目が離せない。目が離せないのはレースのシーンだけではないのだ。いや、それどころかレースシーンだってそっけない。
そして、この映画は、人が生きていくうえで必要なものは何なのかを教えてくれる。勝利のためではなく、自分のために戦う。そんな当たり前のことが、こんなにも尊い。屁理屈はいらない。スピードと戦い、敵と戦い、企業と戦い、いろんな意味での「敵」を倒す。単純なのだ。そしてその単純さが単純ではないのだ。この映画のおもしろさは、そこに尽きる。だから僕もそれだけしか書かない。見ればわかる。