今年の本屋大賞を受賞するのは至難の業になる(10作品のうち8冊を読んでいた。しかも、それぞれの小説のレベルが高い!)と思ったけど、たまたま読んでなかったこの小説が大賞を取ったと知って、じゃぁ、お手並み拝見という感じで読み始めた。なかなか話が始まらないし、ようやく70ページになってヒロインである姫が出てきてので、面白くなるぞ、とドキドキしたのに、一向にエンジンがかからない。それでも期待して200ページくらいまで読む。だが、面白くなりそうになっても、なぜかすぐにブレーキがかかるのだ。そのうち、この小説の手法に問題があることが明確になる。
評判になった『のぼうの城』と同じで手に汗握る話のはずなのに、まるでテンポがよくない。主人公である景姫目線ですべてを描くと読みやすくなるのに、視点があちこち移動するので、まどろっこしい。しかも資料を駆使して説明するので、それもまた、たるい。上下巻950ページ以上の大作なのだが、しかも、海賊による海戦が描かれる時代劇なのに、アクションとしても冒険活劇としても、乗り切れない。これにはがっかりした。
壮大な物語を語ろうとしたことが裏目に出たのである。これは瀬戸内海のかたすみにいた男勝りの姫のささやかな大冒険でよかったのだ。大阪本願寺と信長の戦いなんて、どうでもいい話なのである。もちろん、そんなこと作者だってわかっていた。だから、泉州海賊の豪快な姿を描く、そこに飛び込む景姫の破天荒な姿を重ね合わせて、そこから話を組み立てるのか、と思わせる。しかし、お話はそういうふうにスライドしていたはずなのに、気がつくとちゃんと元の鞘に収まる。ヒロイン不在のドラマはだらだら長くなるばかりで、つまらない。
評判になった『のぼうの城』と同じで手に汗握る話のはずなのに、まるでテンポがよくない。主人公である景姫目線ですべてを描くと読みやすくなるのに、視点があちこち移動するので、まどろっこしい。しかも資料を駆使して説明するので、それもまた、たるい。上下巻950ページ以上の大作なのだが、しかも、海賊による海戦が描かれる時代劇なのに、アクションとしても冒険活劇としても、乗り切れない。これにはがっかりした。
壮大な物語を語ろうとしたことが裏目に出たのである。これは瀬戸内海のかたすみにいた男勝りの姫のささやかな大冒険でよかったのだ。大阪本願寺と信長の戦いなんて、どうでもいい話なのである。もちろん、そんなこと作者だってわかっていた。だから、泉州海賊の豪快な姿を描く、そこに飛び込む景姫の破天荒な姿を重ね合わせて、そこから話を組み立てるのか、と思わせる。しかし、お話はそういうふうにスライドしていたはずなのに、気がつくとちゃんと元の鞘に収まる。ヒロイン不在のドラマはだらだら長くなるばかりで、つまらない。