佐伯一麦と小川洋子が川端康成とその小説について語り合う。3度のセッションは大阪、神戸、京都が舞台となる。対談というより対話。おしゃべり。ふたりが大好きな川端を語り合う。ただのフアンじゃない同業者である作家が、でも大好きな作家のことを話しながら、お互いの発言からいろんな発見をしていく過程が描かれる。
僕は佐伯一麦も小川洋子も大好きだから、これまであまり好きじゃなかった(知らなかった)川端を語るふたりを通して川端康成という作家を再発見していく気分を楽しむ。だいたいもう40年以上川端康成なんて読んでないし。10代、20代前半までで、文豪と呼ばれた作家を読むのは卒業してしまったから、その頃までで琴線に触れなかった作家は好きじゃない、で済ますことになるが、きっと今読むとこの川端だけでなく大好きになる作家はたくさんあるのだろう。この本を読んで川端康成に心惹かれたのは事実だ。
昔、夏休みの課題図書で『伊豆の踊子』と『雪国』を読んだ。(読まされた) 後者は中学生には酷だ。昔の先生はよくもまぁ、あんな本を13歳に読ませたものだ。みんな小説嫌いになるだろう。その後、高校生になって『山の音』や『古都』を読んだが、あまりピンとこなかった。当然だろう。早すぎたのだ。中学時代は芥川。高校時代は三島や太宰。そして漱石。大学に入ってからは泉鏡花。文学少年の定番か。これを読みながら、今なら川端かもしれないな、と思った。
特に小川洋子の勧めてくれる『たんぽぽ』は読みたいと思った。読んでない本はたくさんある。とりあえず今は昔読んでいるけど、まず『掌の小説』を再読か。