これは震災以後の自分の心境を物語るよしもとばななの新作である。死者との交信を描く。でも、これって特別なことではなく、いつもの彼女の定番のようなものだ。
突然の事故で恋人を失い、自分もおなかに穴が開き、ほとんど死んでしまっていた女性が、奇跡的に命をとりとめ、再び現実世界に戻ってくる。でも、もう恋人はいない。たったひとりになり、生きる望みも失い、でも、死ぬこともできず、生きる。生き残ったことに感謝しなくては、とは思うのだが、そんな気分にはなれない。恋人の両親は優しい。生き残った彼女を実の娘のように扱ってくれる。彼の遺品となった数々の作品(彼は造形作家だ)の管理運用を任される。彼の残したものに、囲まれて生きる。まるで、そこにまだ彼がいるようだ。京都のアトリエの整理をする。大家さんからは、ゆっくりでいいと言われる。そう。ゆっくりと時間をかけて、いろんなものを少しずつとりもどしていけばいい。
彼女は幽霊が見えるようになる。でも、そこから不思議な話が展開していくわけではない。幽霊はなにもしないし、ただ、バーのかたすみにいるだけだったり、アパートの窓辺から外を見ているだけだったりする。幽霊を通して、彼女はひとりのゲイの青年と出会う。また、バーのマスターとも仲良くなる。幽霊のおかげかもしれないし、そうではないのかもしれない。どちらでもいいくらいにさりげないことだ。
映画『ゴースト NYの幻』ではないから、死んでしまった恋人は戻ってこない。彼はちゃんとあの世にいってしまったからだ。そのほうがいい、と彼女も思うし、僕も思う。おじいちゃんに連れられて、あの世からこの世に戻ってきた彼女はその現実を受け止めて、「その後」の時間を生きる。これはとても優しい小説だ。
突然の事故で恋人を失い、自分もおなかに穴が開き、ほとんど死んでしまっていた女性が、奇跡的に命をとりとめ、再び現実世界に戻ってくる。でも、もう恋人はいない。たったひとりになり、生きる望みも失い、でも、死ぬこともできず、生きる。生き残ったことに感謝しなくては、とは思うのだが、そんな気分にはなれない。恋人の両親は優しい。生き残った彼女を実の娘のように扱ってくれる。彼の遺品となった数々の作品(彼は造形作家だ)の管理運用を任される。彼の残したものに、囲まれて生きる。まるで、そこにまだ彼がいるようだ。京都のアトリエの整理をする。大家さんからは、ゆっくりでいいと言われる。そう。ゆっくりと時間をかけて、いろんなものを少しずつとりもどしていけばいい。
彼女は幽霊が見えるようになる。でも、そこから不思議な話が展開していくわけではない。幽霊はなにもしないし、ただ、バーのかたすみにいるだけだったり、アパートの窓辺から外を見ているだけだったりする。幽霊を通して、彼女はひとりのゲイの青年と出会う。また、バーのマスターとも仲良くなる。幽霊のおかげかもしれないし、そうではないのかもしれない。どちらでもいいくらいにさりげないことだ。
映画『ゴースト NYの幻』ではないから、死んでしまった恋人は戻ってこない。彼はちゃんとあの世にいってしまったからだ。そのほうがいい、と彼女も思うし、僕も思う。おじいちゃんに連れられて、あの世からこの世に戻ってきた彼女はその現実を受け止めて、「その後」の時間を生きる。これはとても優しい小説だ。