2月の本公演に続いて2ヵ月連続の公演となる。今回はホームグランドである船場ユシェット座(劇団のアトリエ)での上演。作、演出は本阿弥拾得。だから番外公演という感じ。当然の話だが、普段の浦部喜行作品とは全くテイストが違う。キャストもつげともこと本阿弥拾得以外のふたりは外部から呼んだ。NGRの作品というより、完全に本阿弥拾得の趣味によるプロデュース作品だ。
久々の舞台復帰となるみのべなおこが素敵だ。そして思い野未帆も素晴らしい。この二人のアンサンブルで全体を構成した。女(みのべ)が酒場にやってくる。酒場の女主人(思い野)に「ひとりの男を探して欲しい」と依頼する。彼女は失った恋人を探すのか。いや、そうではない。探しているのは男であるとは限らない。女なのかもしれない。これは彼女の瞳に映ったある光景を求める物語だ。そして、たどり着くのは1枚の写真。
真っ白のドレスを血に染める少女(つげともこ)。戦場でのたったひとりの死。そんな現実と向き合う男(本阿弥拾得)。このふたりの背後に立つ愁いを秘めた2人の女、という図式。ふたりがその服を脱ぎ去ると彼女たちもまた真っ白なドレスは血に染まっている。これはこのラストシーンのためだけの芝居だ。
50分という上演時間がとてもいい。この芝居は、ひとつのインパクトのある映像を提示することに終始する。ただそれだけのための物語だ。あのラストが観客の目に焼き付いたなら、それだけでいい。それは1枚の戦場での写真(のようなもの)。それはとてもシンプルで美しい悲しくて恐ろしい光景。だが、具体的に「何か」を提示するのではない。その映像が象徴するものを受け止める。この芝居は一葉の写真であり絵画でもある。だからここにはドラマは最小限でいい。50分が適正だというのはそのせいだ。