続々と新作を発表しキャリアを重ねる月川翔監督の最新作だ。昨年の『となりの怪物くん』と『響』は素晴らしかった。今、青春映画というフィールドでは断トツで才能を発揮している。この道のトップランナー三木孝浩と人気も実力も二分する勢いだ。そんな彼が今回はなんと正統派の「純愛もの」に挑戦した。発光病という設定はあるけど、これはSFではない。しかも、その設定自体だって別になくても構わないくらいに淡い作りだ。さらには「難病もの」という古典的なパターンを踏む。だから今回彼は「純愛+難病」というこの手の映画における「鉄板」に挑んだのだ。
お話自体はお涙頂戴のあざといものなのだが、そこは彼のことだから、敢えてこの王道を奇を衒うことなく挑んでいくことで、反対に新鮮さすら感じさせる映画に仕上げた。
ヒロインの永野芽郁は、ほとんどベッドから出ない。ほぼ全編寝たきりの芝居をさせる。しかもすっぴんで、パジャマ姿。そこもまた狙いなのだが実に大胆だ。しかもこの手の映画のあざとさを回避する。(だけど、お話は実にあざといのに)
いろんな小さな仕掛けを施すことで、作品は見慣れたもののはずなのに、見たこともない映画になる。恋愛ものなのに、実に淡々とした映画で、ヒロインは病室から出ないし、代理体験も北村匠海の無表情ゆえ、バカバカしさがわざとらしさにはならない。これを地味で静かな映画に仕上がる。そこが結果的にさわやかな感動を呼ぶことになる。ベタの極致を行くのに、凄い映画になる。月川監督のこの見事な綱渡りには拍手しかないだろう。この難しい題材を正攻法で見事切り抜ける。あっぱれだ。