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映画・演劇のレビュー

小手鞠るい『いちばん近くて遠い』

2015-05-03 21:12:21 | その他
このタイトルで夫婦のお話、というのならそれはそれでわかりやすい。もちろん結婚にはそういう側面もあるけど。それをどういう展開で見せることになるのか。興味津々で読み始める。なかなかおもしろい。主人公はまず4人の女。それぞれ悪女。でも、犯罪者ではない。彼女たちを前面に出す。でも、必ずしもそんな型通りの作品にはなってない。4人というけど、3人はちゃんと描かれているけど、4人目になる女は描かない。バランスが悪いけど気にしない。この作品自体が、作者の最初の意図からどんどんずれているようで、そこも含めて気にせず書かれてある。バランスとか配分とか、人物配置も結構気の向くまま。それはそれでいい。最初にこの小説を「夫婦のお話」といったけど、ちゃんとした夫婦は1組しか出てこない。夫婦未満。結婚していないまま50代になった。まだ、若くてする気もない。(たぶん) そんな4悪女。

男女の問題を描いている。仕事と恋愛、結婚。仕事には全力で取り組むし、才能もある。でも、恋愛は上手くいかない。4人の女はそれぞれの状況を提示する。そこにはパートナーとなる男も登場スる。男の側の論理とかは描かれない。あくまでも、女目線でほとんでのお話を展開させる。でも、たったひとり、彼女たちと関わる50代の男だけは、そうじゃない。彼の視点からも話は展開する。彼は4人のうち3人と関わる。でも、彼は作品全体の要となるわけではない。そういう部分も含めて全体のバランスが悪い。

最初はなかなか面白いと思いながら、読んでいたけど、途中からあまりに話が出来過ぎで、だんだん乗れなくなる。登場人物がこんなにも偶然から出会いすぎるのはどうか。これではただの作った話でしかない。世の中狭いけど、ここまでは狭くない。別々のお話のようにしてスタートしたのに、それがすべて絡み合う。でも、なんだかただのご都合主義のようにしか見えないのが辛いところだ。作られ過ぎたお話は作品の信頼を損なう。この小説の偶然の多用は常軌を逸している。

ただ、最後までくると、これはこれで一貫性があるか、とも思えた。作者はわざとそうしているのだが、そうすることで何をしたかったのかがこれでは見えないので、いささか不満が残る。したたかな女たち、とは思わない。愚かな女たち、としか思えない。もっと真剣に生きてみよ、と思う。少なくとも僕はこれでは納得しないし、こういうバカ女はすかん。

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