習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

第2劇場『3人の単独ライブ』

2008-10-11 22:47:35 | 演劇
 2劇の新プロジェクトは『苦痛と快楽のシリーズ』。来年の3月まで4作品が連続上演される。今回はその第1弾。なんだかいつものことだが、次々と新機軸を開拓して楽しんでいるなぁ、と感心させられる。よくわからないけど、この集団のこのフットワークの軽さは驚きだ。

 今回はひとり芝居の3本立。しかし、この3本、なぜか微妙にリンクしていく。それどころか3本が絡み合って1本の芝居の様相を呈してしまう。普通なら1本が終わってから、次の作品に移るものだが、話の途中で次に行く。実際はそれほどには、ばらばらにされてはいないのだが、そんな印象を与える。実際は清水翼さんの助監督の話が分割されているだけなのに、まるで全体が複雑に絡み合っているように見えるのだ。

 清水さんの話と、伊藤法子さんの売れない女優の話、そして、もう一つは、彼らが参加している映画の打ち上げで利用するスナックでライブをしている演歌歌手の話。2劇の重鎮、青山誠司さんが演じる。この彼によるエピソードは、かなり面白い。青山さんの存在感だけで作品は成立する勢いだ。パルナスの歌を熱唱するもいい。

 1本の(あるいは3本の)芝居としてこれを見たなら、なんだかまとまりに欠け、物足りないのだが、作者(音間哲)はあえてそんな風をねらっているようにも見える。きちんと完結したお話ではなく、中途半端なところで投げ出してしまう、そんな浮遊感を感じさせるところがいいのかもしれない。なにげないスケッチを切り取って見せたみたいな作りの緩さが魅力である。

 おもしろいけれども、作品としてはそんなにすごいわけではない。そんな気負いのなさもいい。別に凄いものを作りたいのではない。ちょっとへんてこなものを楽しみたいだけだ。そして、それがちゃんと出来ている。大人な芝居である。最後に青山さん作詞、歌による『環状線ブルース』を最後まで聞かせてくれるのもいい。実にくだらない歌詞でした。

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