箕面東『それは現実に継ぐ物語』には参った。ここまでアングラしてくれると笑うしかない。彼らは心から、それを楽しんでいる。お芝居ってほんとうに楽しい。照明と音響、美術、衣装、それらを最大限に生かして舞台の上に不思議な世界を作り上げていく。芝居だからできること、芝居にしかできないもの、それを作り上げるために夢中になっている。
僕たち大人たちすらそれを一緒に楽しんでしまう。ストーリーもよく考えられている。現実世界から向こうの世界へ、それは死の世界だ。そこに迷い込んだらもう出られない。廃墟と化した遊園地は、夢の楽園であり、そこで至福のときを過ごすと、もう苦しい現実世界には戻れなくなる。しかし、ここに居続けるわけには行かない。
昼の白雪姫と夜の白雪姫。彼女たちの争いに巻き込まれてしまう少年。普通ならこの役は凛々しい少年のはずなのに、この主人公をパターンに反して、ちょっと小太りの男の子に演じさせるのがおかしい。ありきたりな話かもしれないが、とてもテンポよく、ツボを押さえてしっかり見せてくれる。1時間という長さもいい。話に奥行きがないので、このくらいがちょうど見やすい。(それから、オープニングにはドキドキさせられたことも付記しておく。)
その点、金光藤蔭『公園ひろいもん』や信愛『ハッピーバースディ』は内容に対して尺が長すぎる。
前者はラストの2人芝居が長すぎる。説明的になったり、分かりきったことを描く部分にはもう少し大胆な省略が欲しい。1時間40分が悪いというのではない。必要ない部分を思い切るべきだと言いたいのだ。
それにしてもこの芝居はとてもへんてこな話で、ビックリさせられる。大の大人が、不倫に破れて公園のダンボールで生活する。というか、浮浪者になるのではなく、捨て犬のまねをして、「捨て人間」になるのだ。ダンボールに入れ捨てられた4匹の犬は拾われていくが、彼女は当然だれも拾わない。芝居全体はこの女と公園の清掃員の男とのラブストーリーとなっている。ゴミ箱さんとか、ベンチさん、外灯さんなんていう妖精とも思えない不気味な奴らが、出てきたり、不倫ごっこする小学生とか(同じ奴らが演じている)わけの分からない人々(物々)が出てきて入り乱れる。笑える。
信愛はいつもながら、うまいのだが、全体がくどい。これなんか充分1時間に収められる内容だ。大切なのはきちんと伝えることである。そのためには実は長くするのではなく上手く編集する能力が必要なのである。(その点やはり箕面東は上手い。後で書く大教大附属池田『裏町のピーターパン』も適切な長さだった。)
人を助けるために自分を犠牲にして、死んでしまった姉が、ゴーストになって6年間弟を見守り続けるなんて、まるで大林宣彦監督の『ふたり』のようなお話。うまく纏めてあるだけに惜しい。
追手門の『明日、ジェルソミーナと』はさすがにスタッフワークは見事だが、なんだか纏まりがなく、いつもの追手門らしさがない。スマートで完璧に仕上げてくるのが、彼らの芝居だった。今年は演出が行き届いてないためシーンシーンがバラバラな印象を与え、残念だった。
池田は単純で、小さなお話を上手く纏めてあり、役者たちも手堅く、コンパクトな芝居。でも野心無さ過ぎ。既成台本なのか、オリジナルかは知らないがどちらにしてもこれでは芝居としての冒険が無い。
扇町『コンプレックスハーモニー』も小さな話だが、こちらは実によく描けている。2人の中学生の女の子の仲のいい友だちなのに、ふたりの間の距離感がたまらなく切ない。淡々とした描写で、そんな違和感を綴る。なにげない会話に緊張させられる。ただ、舞台転換は不要、とまでは言わないがあまり意味がない。
以上、金蘭を含め7本を見た。塚本さんには負けたけど今回はこれが限界。とても忙しかったが、でも、楽しい時間だった。
僕たち大人たちすらそれを一緒に楽しんでしまう。ストーリーもよく考えられている。現実世界から向こうの世界へ、それは死の世界だ。そこに迷い込んだらもう出られない。廃墟と化した遊園地は、夢の楽園であり、そこで至福のときを過ごすと、もう苦しい現実世界には戻れなくなる。しかし、ここに居続けるわけには行かない。
昼の白雪姫と夜の白雪姫。彼女たちの争いに巻き込まれてしまう少年。普通ならこの役は凛々しい少年のはずなのに、この主人公をパターンに反して、ちょっと小太りの男の子に演じさせるのがおかしい。ありきたりな話かもしれないが、とてもテンポよく、ツボを押さえてしっかり見せてくれる。1時間という長さもいい。話に奥行きがないので、このくらいがちょうど見やすい。(それから、オープニングにはドキドキさせられたことも付記しておく。)
その点、金光藤蔭『公園ひろいもん』や信愛『ハッピーバースディ』は内容に対して尺が長すぎる。
前者はラストの2人芝居が長すぎる。説明的になったり、分かりきったことを描く部分にはもう少し大胆な省略が欲しい。1時間40分が悪いというのではない。必要ない部分を思い切るべきだと言いたいのだ。
それにしてもこの芝居はとてもへんてこな話で、ビックリさせられる。大の大人が、不倫に破れて公園のダンボールで生活する。というか、浮浪者になるのではなく、捨て犬のまねをして、「捨て人間」になるのだ。ダンボールに入れ捨てられた4匹の犬は拾われていくが、彼女は当然だれも拾わない。芝居全体はこの女と公園の清掃員の男とのラブストーリーとなっている。ゴミ箱さんとか、ベンチさん、外灯さんなんていう妖精とも思えない不気味な奴らが、出てきたり、不倫ごっこする小学生とか(同じ奴らが演じている)わけの分からない人々(物々)が出てきて入り乱れる。笑える。
信愛はいつもながら、うまいのだが、全体がくどい。これなんか充分1時間に収められる内容だ。大切なのはきちんと伝えることである。そのためには実は長くするのではなく上手く編集する能力が必要なのである。(その点やはり箕面東は上手い。後で書く大教大附属池田『裏町のピーターパン』も適切な長さだった。)
人を助けるために自分を犠牲にして、死んでしまった姉が、ゴーストになって6年間弟を見守り続けるなんて、まるで大林宣彦監督の『ふたり』のようなお話。うまく纏めてあるだけに惜しい。
追手門の『明日、ジェルソミーナと』はさすがにスタッフワークは見事だが、なんだか纏まりがなく、いつもの追手門らしさがない。スマートで完璧に仕上げてくるのが、彼らの芝居だった。今年は演出が行き届いてないためシーンシーンがバラバラな印象を与え、残念だった。
池田は単純で、小さなお話を上手く纏めてあり、役者たちも手堅く、コンパクトな芝居。でも野心無さ過ぎ。既成台本なのか、オリジナルかは知らないがどちらにしてもこれでは芝居としての冒険が無い。
扇町『コンプレックスハーモニー』も小さな話だが、こちらは実によく描けている。2人の中学生の女の子の仲のいい友だちなのに、ふたりの間の距離感がたまらなく切ない。淡々とした描写で、そんな違和感を綴る。なにげない会話に緊張させられる。ただ、舞台転換は不要、とまでは言わないがあまり意味がない。
以上、金蘭を含め7本を見た。塚本さんには負けたけど今回はこれが限界。とても忙しかったが、でも、楽しい時間だった。