『シチズンフォー スノーデンの暴露』は見ていない。これはあの映画で第87回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したローラ・ポイトラス監督が、写真家ナン・ゴールディンの人生とキャリアを描くドキュメンタリー映画である。僕はナンのことを全く知らなかった。だから白紙状態で映画と向き合う事になった。
映画はメトロポリタン美術館での過激な抗議活動から始まる。これは彼女の人生を描くドキュメンタリー映画ではあるが、同時にこれは彼女が人生を賭けた闘争の映画なのだ。
彼女の伝記映画ではなく、医療用麻薬オピオイド蔓延の責任を追及する活動を追ったドキュメンタリー映画でもある、というのがいい。70年代から80年代にかけてアートシーンを席巻した彼女の軌跡を追いかけて、それ同時に今現在彼女の戦いであるオピオイドで亡くなった20万人の弔い合戦を描く2本立てになっている。
50年に及ぶ彼女の日々をそんなふたつの時代にフォーカスした。彼女の青春時代と現在である。そこではタイトル通り、『美と殺戮』が描かれる。それを彼女の原点である幼い頃からの姉との日々で挟み込み描く。最初と最後に2度、姉の死に至る描写が描かれる。姉の無念を引き継いで生きる。戦いに勝利するがそれが終わりではない。彼女の戦いは続く。