アイスランドの気鋭フリーヌル・パルマソンが監督・脚本。2時間23分の長編はあまりにも淡々としたタッチで描かれ寡黙。スクリーンにはアイスランドの過酷で美しい風景が静止画のようにフィックスで長く示される。主人公の牧師が撮る写真のように。19世紀後半、デンマーク統治下のアイスランド。布教の為、辺境の村にやって来て教会を建てる使命を受けた。そのための旅が描かれる。船ではなく、陸路から旅したのはこの島を自分の目で見たかったから。
重い機材を持って写真撮影をする。雄大で圧倒的な自然。この過酷な旅が描かれる前半部分が素晴らしい。映画はそれを敢えてスタンダードサイズの狭いスクリーンで見せる。彼は予期せぬアクシデントの連続から心も体までも壊していく。
瀕死の状態で村に到着して教会建設を描く後半、村人の女性に心惹かれ癒されるはずが、徐々にさらに心を壊し狂気に至っていく。彼の内面がよくわからないからラストの出奔には驚く。彼をそこまで追い詰めたものは何なのか。アイスランド人のガイドとの確執から彼を殺してしまうことで破滅に至ったという説明だけでは納得いかない。表に出るものだけを見せながら寡黙を貫く。これはそんな映画である。