なんとこれでシリーズ第8作になるようだ。僕は何冊か読んでいるけど、さすがに全部ではない。途中から読み始めたし、遡るほど熱心なファンじゃない。でも、安心して読めるから新刊が出たら気づくと読む。今回がファイナルとなるようだ。みつばの町に来て8年。郵便配達業務に励む平本秋宏も32歳。
この町で配達を通して出会った町の人たちとのささやかな交流を描くシリーズの完結編らしいお話のまとめ方をする。これまでのエピソードに登場した人たちとのその後が描かれていくのだ。先日の「Eバーガー」シリーズの最終巻とよく似た感じだ。「恋ポテ」(Eバーガーシリーズのことですね)も周囲の人たちとのその後を丁寧に描いた。ふつうこういうサービスはしないのだが、最近の作家は読者に優しい。痒いところにもちゃんと手が届くような配慮をする。(でも、それはそれでやりすぎのような気もするけど。読者の想像力を削ぐことにもなるから気をつけたほうがいい。もっと読みたいけど、というところで止めるのも大事。)
さて、今回の4話、それぞれ優しい。いつも思うことだが、いくらなんでも配達をしながらこんなふうに受取人たちと交流を深めることはできない。それでは仕事になりません。でも、そこはお約束。お話だから可能なこととして見過ごす。さらりとしたタッチでさりがなくお話は続く。最後なんだからもう少し盛り上がってもいいのにな、と思う。
そして大団円。3月末、小説のラストで秋宏が転勤することになる。ついにみつばを離れるのだ。さらにはたまきにプロポーズする。そして受け入れられる。急展開ではない。遅すぎたくらいだ。でも、こんなものかもしれない。そのへんはこれはこれでリアルだ。あっさりしているのもこのシリーズらしくて悪くない。
郵便配達という地味な仕事を題材にして、それを地味にちゃんと描く。なかなか誠実ではないか。