これで2度目となる。この集団の描く、とてもゆるい芝居は、毒にも薬にもならないけど、なんだか見ていて心地がよい。それだけでいいじゃないか、と思う。岡部尚子さんの主催する空晴にテイストが近い。エチュードで作られたせりふのひとつひとつは、なんだかぎこちないけど、でも、確かな言葉として胸に届く。なんとなくしゃべったような一言までもが、大切な心の声に思えてくる。そのくせ、それって、ほんとうにたいしたことを言ってるのではないのだ。
今回のお話も、たわいないと言えば実にたわいもない。2つの引越しの日、別々の時代の同じ家の出来事が、ひとつにつながる瞬間の奇跡が描かれる。若き日の両親と出会い、今では死んでしまった母親の年齢を超えてしまった3姉妹が、母親と抱き合うシーンでは、ちょっとウルウルきて泣きそうになる。これではちょっとしたファンタジーじゃないか、とも思うが、まぁ、あまり考えてはいない。思いつきレベルの話なのだ。でも、その軽さがいい。この集団らしいというのは、そこなのである。
ちょっとしたアイデアを、大切にして、そこを根幹に芝居を作れる。みんなでああでもない、こうでもないとおしゃべりしながら話を作るのだろう。そうすると、あとは、それぞれのキャラクターが勝手に動き出す。基本設定だけがあれば、あとはどんどん役者たちが作る。そんなふうにしてこれまでも芝居を作ってきたのだろうし、これからもそうするのだろう。そんなお気楽な姿勢がいい。この肩の凝らない適度な軽さが彼らの身上だ。とても気持ちのよい90分だった。