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映画・演劇のレビュー

『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

2012-09-15 06:51:36 | 映画
 あのTVスペシャルを見てしまった以上、もうなんの期待も抱くことのなくなった本作を、それでも、一刻も早く見たいと思い劇場に行く。序盤はやはりため息をつくしかない展開。オープニングなんてこれは『男はつらいよ』なのか(定例の夢のシーンを踏襲?)と思わせる。青島とすみれさんが唐揚げ屋の夫婦になっている。こういうふざけたシーンからスタートして、TV同様のお祭り騒ぎの湾岸署に戻ってきて、ドラマは始まる。

 だが、徐々にシリアスな展開に戻り、終盤はかつてのTNシリーズの緊張を取り戻す。正直言ってほっとした。ふざけたままで終わられたら15年の歴史に汚点を残すだけでなく、このドラマ自身を否定せざるおえなくなるところだった。もちろん本広監督以下スタッフ、キャストがそんなことはさせないことはわかっていたのだが。それでも充分不安にさせるのがあの『ラストTV』だった。

 いかにカッコよく見せるかではなく、どこまで日常的ディテールを大事にするかがこのシリーズの肝だった。TVシリーズでなら出来たことがことごとく映画では不可能になる。そんなジレンマを抱え、行き着いたのがこのファイナルであろう。2年前の『3』をスタート地点にして新シリーズとしてリニューアルしたのだが、この作品自身は11本のTVで終わっている。そのことをいちばんよく知っているのは監督自身だろう。だから、無理を承知でここまで引き延ばしてきた。だが、もう限界だ。

 では、最後にどこに着地するのか。落とし所を見つけるための今回のファイナルである。先行する1か月前を描くドラマスペシャルは、踊るの一面を拡大して、バラエティ仕立てで見せる試みだったのだろう。だが、見事失敗した。原因は単純だ。はしゃぎすぎたことだ。バランスすら欠く。きっと先に映画を撮影して緊張が途切れていたのだろう。

 その点この映画版は大丈夫だ。初心に戻ることで決着をつける、というこのシリーズにとって理想的な展開を見せた。ラストの「警察をなめるなよ!」という青島のセリフが胸に沁みる。青島が何のために警察に居るのか。そのことをもう一度思い出させてくれる。彼は警察が大好きなのだ。上層部がどれだけダメで腐っていようとも、警察自身が悪なのではない。正義のために戦うという行為は間違ってはいない。現場の人間は一生懸命働いている。真面目に生きている人たちの平和を守るために、おまわりさんたちは必死になって悪い奴らを取り締まる。

 お話はちゃんと青島と室井の約束に立ち帰り、終わる。もちろん、一度は警察手帳を取り上げられた青島も再び刑事に戻る。今回は派出所勤務なんかにはならないけど、課長になっても青島は現場にこだわる。コートを手にして颯爽と街に飛び出していく。そんなラストがこのシリーズの幕切れにふさわしい。

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