もうこんな小説ばかり読んでいる。40歳を迎える一人暮らしの女性がたまたま、ずうずうしい隣の部屋の老婆と知り合いになり、なんとなく彼女の世話をすることになる。彼女の部屋のかたずけを頼まれる。ゴミ屋敷と化していた部屋を整理していくことで、だんだん彼女と心を通い合わせていくことになる。
老婆とひとり暮らしの女。『その扉をたたく音』と同じパターンだ。なんだか、今はこういうパターンに心惹かれる。誰かのために何ができるか。他人でしかないのに、他人だから反対に楽に接していけるのかもしれない。おせっかいだということはわかっている。だけど、身寄りのない老婆がかわいそうというのでもないこともわかっている、自分が寂しいのだ。だから、かまうことで、反対にかまってもらっている。
どんなに気丈に振舞ったところで、ひとりはさびしい。そんな当たり前のことを痛感する。部屋をかたずけること。いろんなものを手放すこと。終活なんかではない。新しい一歩を踏み出すことだ。死んでいく老婆も、彼女を失いまたひとりになって、でも、以前とは違う強さを手にして、そこから始めること。