29歳無職。ミュージシャン志望。でも、才能はない。(たぶん) 努力もしない。親からの仕送りで生活している。親が金持ちだからなんと毎月20万も貰っている。だから働かなくても生きていける。大学を卒業してもう7年になる。
最悪だな、ときっと誰もが思う。本人もそう思っている。だけど、そんな自堕落な生活を続けている。そんな彼がたまたまボランティアで訪問した介護施設でひとりの青年と出会う。このホームで介護士をしている彼の吹くサックスに魅了される。彼とふたりでバンドを組みたいと思う。彼を説得するために毎週のようにこの施設に顔を出すことになる。
でもこれは音楽のお話ではない。彼らふたりと、この施設で暮らす老人たちとの物語だ。彼は口の悪い老婆にいいようにこき使われる。ここで暮らす老人たちとの触れ合いを通して彼は大切なものをみつける。グループホームを舞台にして、人生のスタートラインでもたもたしている青年と人生の最終コーナーで生きがいを見出す老人たち。これもお決まりのハートウォーミングなのかもしれないけど、読みながら胸がいっぱいになった。
この作品の老婆に6月に亡くなった母親のことを重ね合わせる。そして同じように無職の自分を主人公に重ね合わせる。今、同じように仕事もせずに生きているけど、自分とこの青年とは立場はまるで違うのだけど、読みながらこれはなんだか他人ごとではなかった。介護の仕事なんて僕にはできないけど、早く新しい仕事を見つけなくてはと思う。今日もハローワークに行く。