大阪の北河内地区7校による合同公演。2月の学年末テスト終了後から春休みにかけて稽古を重ねてたった1日、1回限りのこの日の本番に挑む。D地区高校演劇部の1、2年生の面々が果敢にもこんなにスケールの大きな作品に取り組むのは凄い。
クライマックスの大政奉還から竜馬暗殺、そして英の独白に至るラストシーンは圧巻だった。そのワンシークエンスでそれまでのドラマを一気に総括した。
野田秀樹がドストエフスキーの原作を幕末の日本に置き換えたこの戯曲はいつも通り観念的で難解な作品である。これを説得力のある作品として見せるのは困難だ。
この芝居も成功しているとは言い難い。必ずしも前述したラストまでのシーンは上手くはいってない。シーンシーンの完成度にばらつきがあり流れが悪いからギクシャクしている。見ていてこれはかなりあやういなと思った。
役者たちの芝居にも(かなり)デコボコがあるからあまり心地よくない。だがそんなことは当然の話だろう。まだ演技経験の浅い高1、高2の若い彼らに多くは望めまい。しかも大人数のアンサンブルプレーである。それでなくとも難しい芝居なのである。だいたい陰翳を秘めたケレン味たっぷりの芝居を見せるのはプロでも難しい。15、6歳にそんな余裕はなかろう。
だから気にすることなく、自分たちの全力をぶつけることしかない。だが、金蘭演劇じゃないのだからパッションだけで2時間を走り抜けるのは困難だ。さぁどうする?
役者たちを技術スタッフ(音響照明)がしっかりサポートした。そして前述したクライマックスに流れ込むという展開である。それは見事な着地だった。2時間の大作を走り抜けた彼らはこの芝居1本で大きな成長を遂げたことだろう。いい芝居を見た。