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映画・演劇のレビュー

白岩玄『愛について』

2012-05-30 20:46:22 | その他
 こんなにもシンプルなタイトルはない。このタイトルのもと、とても小さな恋愛小説を作る。2つの中篇と4つの短編からなる。

 2人の男たちのそれぞれの恋愛が交互に描かれていく表題作から始まる。2人は親友同士だが、性格はまるで違う。お互いの話を聞きながら、それはないよな、と思う。でも、気にはなる。自分にはない感情や、状況は聞いていて、興味深い。慎重な男と、軽いばかりの男。でも、実は2人ともよく似た性格かもしれない。

 男の側からだけではない。男女の話もある。『終わらない夜に夢を見る』だ。別れたのに、今も以前と同じように月に一度は会って、同じように、食事をしたり、時にはセックスもする。彼は今も彼女のことが好きで、忘れられない。彼女も彼のことが嫌いではない。でも、恋愛感情は最初から抱けないでいた。彼に関わらず今まで付き合った誰に対しても、だ。他に好きな人が出来たから別れたのではない。そんなある日、彼に新しい恋人が出来る。でも、彼は1歩を踏み出せない。まだ、今も彼女を思い切れないからだ。自分の心に誠実でありたい。でも、人の心までは動かせない。

 4つの短編も同じだ。それぞれの想いが、それぞれの状況の中で、描かれる。ほんのちょっとした出来事を通して描く。自分にだけ小さな人間が見えて、彼らの行動が気になる、とか。夜中にひとりドライブをしていて、偶然拾った女性と海を見に行く、とか。心の空隙を何かが埋める。あるいは、何かが邪魔をする。人はそんなふうにして、生きている。


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