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映画・演劇のレビュー

『ハッピーフィート』

2007-03-11 10:31:01 | 映画
これも『ナイトミューシアム』と同じように凄い技術だと思うが、これを見てももう驚くことすらできない。何万匹ものペンギンが南極の氷河の上で、動き回り、歌い踊るのである。あっと驚く凄い映像のオンパレードなのに、それだけではもう感動しない。感覚も鈍ってしまいどんな凄いSFXもCGにもあっそう、と思ってしまう。技術の進歩が恨めしい。

 だが、この映画はそれだけでは終わらせない。実は、凄い仕掛けがストーリーのほうで用意されている。エイリアン(人間のことだ)と話し合うために外の世界へと旅立った主人公ペンギンが、人間に捕獲され水族館に入れられる。ここからの展開が、呆れるけどちょっとした驚きである。

 水槽の前に立つ少女に対していつものようにタップダンスを見せる。するとどんどん人が集まってくる。ペンギンのダンスを通して人間たちはこれ以上の環境破壊はやめようといい始める。ペンギンたちを守るため人類が力を合わせていこうとする。このあまりに安直な展開には驚きを通り越して感動するしかない。どんなSFXよりも、このアホなストーリーの方が凄い。『不都合な真実』を見てもわかるように、人間のエゴがこの地球環境をここまで破壊し尽しとどまることを知らない、というのに1匹のペンギンのダンス・パフォーマンスが魚の乱獲を止め、地球の温暖化にストップをかけるというのである。この映画はその驚愕のラストを本気で描いたことだけでも、存在意義がある。

 予告篇で、南極の見渡す限りの氷の大地で、1匹のペンギンがいきなり「マイウェイ」を歌いだす、というのを見て呆れるやら、驚くやら、一体これは何だ、と思わされたが、本編にはあれを超えるものはないと高をくくっていたのに、この意外なラストにはかなり満足。

 『マッドマックス』シリーズを手がけたジョージ・ミラー監督作品。環境破壊が進んで人類がほぼ死滅した後の地球を舞台にして、荒涼とした大地で殺戮と収奪を繰り返す人々を描いた彼の到達点がこの映画である。(あれっ、もしかしたら『マッドマックス』は核戦争後の世界だったっけ?)

 余談だが『マッドマックス2』の凄まじいアクションは今でも忘れられない。映画は1から3へと表現はどんどんエスカレートして行くが、個人的には2が一番好きだ。このバイオレンス映画のテーマは実は<人類の再生>であったことことなんかも、ふと思い出した。

 あの映画の延長戦上に、この一見ただのファミリー映画に見える作品が確かにあるのだ。『ロード・オブ・サ・リング』で冒険の旅に出たイライジャ・ウッドが、この映画でも主人公として一人旅にでる。彼のような弱っちい奴が勇気を奮った時、人類は救われるのだ。きっと。

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