習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『龍が如く』

2007-03-11 10:18:47 | 映画
 三池崇史が今度はコンピューターゲームの世界に殴りこみをかける。凄まじい暴力と無意味な殺戮。これぞゲームの世界だ、といえるようなバイオレンス巨編である。バカバカしさの極限を延々クライマックスで見せていく。

 ゲームおたくですらあきれ返ったのではないか。バカも休み休みしろ、と毎日何時間もゲームで人殺ししている子供たちにすら言われそうな映画である。ペラペラの登場人物が、ただ戦い、血を流し続ける。なぜ殺すのかなんて考えてない。ただ面白いから、敵が刃向ってくるから、やられる前にやり返す(?)だけなのだ。

 アイパッチを付け金属バットをブンブン振り回す狂犬岸谷五朗が、ただひたすら北村一輝を追いかけて「ひりゅーちゃーん」と猫なで声を上げて町をさまよう。戦うためだけに新宿の街をふらつき、出合った人を片っ端から殺しまくっていく。自分の子分だってガンガン殴りまくり、半殺しの目にあわせるのだ。

 レジからお金を盗んだ快感から、次々に強盗を繰り返していく若いアベック。銀行に入ったのに現金が全くなく、いつまでも立てこもる毛糸のマスクの2人組。彼らのまるで本題とは関係ないような無意味なサイドストーリーも充実させて、くそ暑い夜の新宿歌舞伎町で大暴れしていく。この国は無法地帯なのか、という突っ込みなんて誰も入れない。そんなこと言ってる間に殺されちゃうよ。

 暴走に次ぐ暴走が際限なく描かれていく。まるでゲームのような映画だ。(というか、もちろんゲームです)ただ、ゲームと違い、生身の人間がそれを血まみれになって演じているのが痛ましい。見てるだけでも痛い。三池のねらいはそのへんにある。この映画にはゲームにはない痛みがある。殴れば痛いという当たり前のことが、こんなにもしっかり描かれることに意味があるのだ。それが三池のゲームの映画化に対するコンセプトだ。

 無意味で愚かしく、無内容な殺戮ショーを見終えたとき、如何とも言いがたい気分になる。うんざりだがなぜか心地よいのは何だろう。

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