山田洋次監督90歳。(この映画を作ったあと、91歳になられた)彼の90本目の映画になる。吉永小百合を主演に迎えた『母べえ』『母と暮らせば』に続く「母」3部作の3作目。(たまたまそうなっただけだろうが)
今回は現代が舞台になる。隅田川のほとりにある足袋屋。そこで暮らす70代後半になる女性。ひとり暮らしのそんな女性が吉永小百合。ひとり息子はもう50になる大泉洋。大会社で人事部長を務めている。孫は永野芽郁。大学生。映画はこの3人の話。
母親と喧嘩した孫はおばあちゃんの家に居候をしにくる。優しい祖母との下町暮らしはなんとも気持ちがいい。そこに父親が心配してやって来た。
なんとあの吉永小百合がおばあちゃんを演じるのだ。しかも実年齢の。これは画期的な映画である。
山田洋次が描く現代はとても優しい。仕事とはいえリストラすることに苦しんでいる息子。妻とは別居している。これは彼が不本意な仕事を辞めて、母親と同居するまでの話。
甘いな、と思うところも多々あるけど、山田洋次が思う「今という時代」がここにはしっかり描かれてある。時代錯誤は承知している。だけどそれの何が悪いのか。こんな時代だからこそ、必要なものがそこには確かにある。自分が信じる映画を作り続ける。素晴らしいことだと思う。
大泉洋がまるで大人になった寅さんで、工藤官九郎が子どものままの寅さん。そして吉永小百合は彼の母親であるサクラさん。そんな空間が描かれる。