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映画・演劇のレビュー

『キングスマン ファーストエージェント』

2021-12-30 18:41:06 | 映画

ようやく劇場公開が始まった。コロナのせいで何度となく公開が延期され、今回だってほんとうに公開されるのかと危ぶんだけど無事ロードショーされた。よかった、よかった。これからも延期されているハリウッド映画の大作が時期を外して公開されるだろうけど、期待したほどの興行収入をあげれないのではないか。宣伝だって大変だと思うけど、それより何より時期を外すと鮮度が落ちる。そんな気がする。映画って不思議だ。

さて、シリーズ第3作である。今回は時代を遡り、キングスマンがどういうふうにして始まったのかが描かれるビギニング編。過去の2作品とはまるでタッチが違い、そこにはすごい違和感がある。でも、それが嫌か、と言われるとそうではないと答える。こういうアプローチはありだ、と思う。それにこの映画はとても新鮮だ。マンネリ化したシリーズものとは一線を画する。(もちろん、マーベル作品ね)

意外だらけで、最後まで楽しませてくれる。だいたいこれは戦争映画なのである。中盤は戦場でのシーンが続く。いったい何を見てるのだろうか、と思う。でも、それが面白いのだからいいではないか。さらに驚きは、主人公が途中で死んでしまうのだ。主人公はレイフ・ファインズ演じる父親なのだけど、何の予備知識もなく見ていたので、息子が主人公で彼が成長していく姿を描く映画だと思っていたから、彼が死んでしまったのは衝撃的だった。この先この映画はどうなるのか、と心配したほどだ。だってその時はまだ始まって1時間半くらいで、あと40分くらいはあるのではないか、と気分的には感じていたので、ね。(時計を見ていないから正確な時間はわからないけど、2時間11分の映画だから、そんなくらいだと思った)

悲しみに沈む父。映画の冒頭では最愛の妻を殺されているのだから、悲しみは深い。おじさんは天涯孤独になる。こういう悲劇の主人公がレイフ・ファインズにはよく似合う。でも、彼が主人公だったなんて似合わない。

さて、そこからひとりになった父ちゃんが敵と戦うお話へとシフトする。敵のアジトに向かい、ほぼ一人で断崖絶壁の上にある要塞(というか、小屋なんだけど)にたどり着き、戦う。荒唐無稽な展開で、こんな映画だったっけ、と自分が見ている映画がなんだったのかを、疑うことになる。どこからどうみても『キングスマン』じゃないよな、これ、と思う。しかも決して若くはないし、マッチョでもないレイフ・ファインズが無茶苦茶頑張るのだ。強い! 超人的だ! いいのか、こんな展開で、という状態でラストに突入する。細かいことは置いておくけど、これはなんだかすごい大作で、でも、掴みどころがなくて、これがあの『キングスマン』なのか、という驚きと確かにこれも『キングスマン』だな、という納得。お正月大作映画にふさわしい傑作アクション大作なのである。

これはネットフリックスによるお正月超大作映画『ドント・ルック・アップ』(レオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンス主演)と並ぶ傑作である。華やかで、きちんとした娯楽映画なのに、それだけにはとどまらない。そんな不思議な作品に仕上がっている。


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