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映画・演劇のレビュー

Ugly duckling 『ト③ランク』

2009-03-08 20:51:32 | 演劇
 とうとう3週目に突入した。今回は少し軽めのテイストの作品になっている。起承転結で言うと『転』にあたるパートだ。ここは今までの流れから少し逸れるほうがよい。そういう意味でも今回のこの展開は悪くない。

 『100年トランク』ではサブ・キャラクターである分別子(村上桜子)を主人公にして、彼女が仕事を終えて家に帰ってから、翌朝までの物語というのもいい。彼女の私生活を描いて、それがトランクとほんの少し関わる。

 今回の相手役(ゲスト)は桃園会の橋本健司。彼が分別子の「もと彼」役で登場する。橋本さんのぼんやりしたキャラがこの作品に不思議な味わいを与える。本編をうまくミス・リードする。『トランク』全体の醸し出す重いタッチの中で、このエピソードは2人の設定も含めて、独自の軽さを作ることに成功した。

 ゴミの分別を仕事にしている分別子は、そんな仕事をしているにも関わらず、家の掃除は全く出来なくて、マンションはゴミ屋敷と化しているという設定も笑える。彼女の部屋を訪れた「もと彼」と彼女が部屋の前に置いたトランクと過ごすなんでもない一夜のお話だ。特別な話なんて何もない。だが、そこがいい。

 ただし、少しまずいなぁと思う部分も実はある。トラ(イシダトウショウ)とカタメのトランクを巡る話が挿入されるのだが、その部分が少しギクシャクしている。ストーリーテラーであるトラは今回のエピソードには必要がない。なのに無理して描いたため全体の流れが悪くなったのだ。さらにはラストで分別子がトランクを持って旅に出るなんてシーンが用意されるが、あれはおかしい。彼女は朝になったらいつものように仕事に行くはずだ。まぁ、あのシーンは一種のイメージ・シーンなのだが、それにしても、そこはきちんと抑えてもらわなくてはなるまい。世の中には、旅をする人としない人がいる。分別子は旅を夢見ても実際には旅に出ないタイプの女性なのだから。

 今回は空間全体を使った芝居作りを目指したが、そこでも少し失敗している。客席を中心にしてその周囲全体をアクティングエリアとして構成したが、客席の周囲をぐるぐる回るシーンがうまく機能していない。なんかへん。美しくないのだ。だが、分別子の部屋はなかなかいい。ドアを開けると雪崩を打ったようにものが溢れ出て来る。それを橋本さんがなんとか防ごうとして焦るシーンがおかしい。

 冒頭のニュース映像で語られる分別子の生態(?)を語る部分も笑える。英語のナレーションで日本語字幕が入る。こういうなんでもない仕掛けが楽しい。

 

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