今月の児童書は3冊。イチゴが大好きだからこの本を手に取った。ここには特別なことは何もない。どこにでもいる小3の女の子の日常スケッチだ。彼女にとっての大きな出来事(学芸会、ダンス発表会、学校の屋根裏散歩)もあるが、それも事件やイベント自体はほとんど描かれない。その前のきっかけの部分だけでお話を止めて、次につなぐ。これはなかなかうまいスタイルだ。きっかけさえちゃんと描けたなら、結果はついてくるから、その後は描く必要はないという潔さ。何かが起こる瞬間のときめきがしっかり伝わってくる。
赤羽じゅんこ(はらぐちあつこ・絵)『ひと箱本屋とひみつの友だち』も同じようなドキドキから始まる。そこは、いいんだが途中から減速するのは残念。ひと箱本屋という入り口のアイデアが生かされていない。バリアフリーの問題も中途半端。一般論ではなく、もっと彼女に寄り添って欲しい。彼女たちの鬱屈や弱さを突き詰めることが必要。それが結果的に普遍につながる。
3冊目ははらだみずきの『太陽と月 ジュニアユース編』。シリーズ第2作。中学生になった太陽と月人の2人がそれぞれの場所でプロを目指して第一歩を踏み出す姿をサラッと見せてくれる。次回は高校生。