堤幸彦の最新作なのだが、思った通り中途半端な映画だった。メジャーの商業映画としてこの素材を取り上げるとどうしても詰めの甘い映画にせざるを得ない。このテーマを突き詰めるときつすぎるからだ。なんとか娯楽映画としても見ることのできる作品に仕上げる必要から、ここまでにとどめるしかなかったのだろう。それは彼の前作『望み』も同じだ。口当たりのよさを残さなくてはお客さんは来てくれない。
ミステリーとして興味を引く展開をすることは第1条件だろう。原作である島本理生の小説をそのまま作ると口当たりの悪い作品にしかならない。『羊たちの沈黙』のような映画に出来たならいいのだけれども、なかなかそれは難しい。そこでまず、お話の展開で見せて、役者陣が踏ん張ってくれるから、この程度のお話でもそれなりの奥行きは生まれる。バランスを保つことには成功した。
芳根京子演じる犯人の心の闇と彼女を取材する北川景子の闇が重なり合う。性的な接触を強要する父親への嫌悪感。幼い少女にとってそれはとんでもない恐怖だ。二人の抱えるこの闇をどう描くのかがこの映画の方向性を定めることになる。だが、そこに足を掬われるのは危険だから、堤監督は避けた。予定通りここまででとどめる。その先にはいかない。行こうと思えば行ける。それだけの力量が彼にはある。悪い映画ではないし、確かによく頑張っている。それだけに、それって、なんか悔しいな。