これは難しい芝居だ。伝えたいことが伝わりにくい。敢えて伝わらないように描いている節すら感じさせる。小川家の父親が川で溺れて死ぬ。大雨の夜、泥酔して川に落ちた。あれから3年。三回忌の法事に集まった子どもたちのお話。
それを冒頭の葬儀のシーンから見せるから死んだ父の葬儀かと錯覚するが、そうではない。従姉妹の夫の葬儀のようだ。まだ話が始まったばかりで人間関係もよくわからないし、お話の設定もわからないままいきなり話を進めていく。かなり乱暴な芝居だ。
その後、4人兄妹のそれぞれの現状が順次描かれる。舞台空間は広いから、上手の上には長女の暮らすマンションの部屋、下手は下には実家のセットが作られている。前面には砂利が敷かれてあり実家の庭。下手前景には車やバーが出る。広い空間を生かして様々な場所を提示する。暗転や場所移動が多い芝居だから、こういうふうにしたのだろうが、散漫な印象を与える。高低差を活かしているわけではなく、その空間を使わないときは邪魔。あちこちでの芝居に集中できない。
不妊治療中の長男夫婦の話から始まり、同性愛の長女、パチンコ依存性の妹。それぞれの現状が綴られる。最後は父の法事で集まった場でのやりとりがクライマックスになる。だがそこで何が解決するわけではない。すべてが曖昧なまま終わる。長男夫婦の離婚、同性愛のカミングアウト、それは結末ではなく、それもまたただの通過点でしかない。
言葉は途中で宙を舞う。どこかに辿り着く前に途切れる。不思議な芝居だ。それを若い大学生たちが演じる。難易度の高い作品に挑戦して健闘している。